KREVA本人が新作『Project K』を全曲解説

KREVA

約30分の中に10曲の洗練されたトラック&ラップが凝縮されている『Project K』。ここでは、KREVA本人が1曲ずつの音作りのポイントを紹介。ぜひ作品を聴きながら読み進めていただき、『Project K』の各所にちりばめられたKREVAの音へのこだわりや挑戦を感じてみてほしい。  

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M①「No Limit」

トラック完成後すぐ歌詞を書いてすぐ録った

いつもはトラックを作りためておいてその中から良いものを選んでいきますが、「No Limit」はトラックを作ってすぐに歌詞を書いて、すぐ録って、早い段階でこの形になっていました。使ったシンセのプリセットは、音から察するにテクノ的なものを意識して作られたものだと思うのですが、自分の中で聴こえてきたドラムを合わせています。

M②「口から今、心。」

プロデューサーBACHLOGICの技が光る

BACHLOGICに作ってもらったトラックです。トラックを頼んだら150曲ぐらい送られてきたので、1日かけて全部聴いて粗選びして、また聴き込んで、自分のアルバムに欲しいテイストと「口から今、心。」というテーマが歌えるトラックに絞り、最終的に「No Limit」の次に来る曲ということで決めました。送ってもらったトラックにボーカルを乗せて返したところ、少しフォンクっぽい感じのカウベルみたいな音などが足され、ドラムがパワーアップして立体感が増して返ってきました。

M③「TradeMark」

Traktor Kontrol S4でスクラッチを録音

スクラッチは、当時確かターンテーブルの調子が悪くて、コントローラーのNATIVE INSTRUMENTS Traktor Kontrol S4でスクラッチして録りまくって良いところを使いました。大変でしたが、S4でもスクラッチできるんだなと思いました。あと、暴力的な音をだいぶ入れているので、それをうまくD.O.I.さんが処理してくれたんじゃないかなと思います。

M④「IWAOU」

ギターと尺八の音色を合わせてパンニング

もともと使っていたギター・リフのサンプルに尺八のサンプルを合わせました。それをパンを振って鳴らして、左右のどちらかが鳴っていたり鳴っていなかったりする状態を作ったのがポイントだと思います。ずっと同じフレーズが鳴っていてコード進行だけが展開していくのがすごく好きなところで、これはほかの曲でも多用しているやり方です。

M⑤「ラッセーラ」

笛の音色をあえて汚して遠くで鳴らした

プロの方に吹いてもらった笛のフレーズを使っています。すごく奇麗な音で録ってきてくれたのですが、あえてプラグインでカセット・テープ的に汚して遠くで鳴らすような処理をしました。青森ねぶた祭で実際に使われている“進行”という種類のおはやしの笛を使っていて、それに加えてサンプル・ライブラリーの三味線のフレーズをギター・エフェクターに通してギター・リフのように使いました。

M⑥「Project K Interlude」

AIの力をフル活用して自分でミックス

ちょっと流れを変える役割が必要だったので、今、自分が持っているトラックの中から一番合うものを選びました。ミックスは自分で手掛けています。インタールードなどであれば自分でやってもいいんじゃないかなというのは前作『LOOP END / LOOP START』(2021年)から思っていて。AIの力をフル活用して全部のトラックを解析してもらえるようにもなってきたので、あまり問題ないですね。俺が作った音をそのまま楽しんでもらえればと思います。

M⑦「Knock」

大人数のコーラスをAIで生成

このトラックはめちゃくちゃ気に入っています。メインのサンプルはSpliceから見つけたものをチョップ&フリップして作っていて、それが相当うまくいきました。コーラスをAIで生成してみたくて作った曲で、“ヘーイ”というかけ声も大人数で言わせられたのが面白かったです。ただ、生成した中には全体から飛び出てしまう声もあったので、そういうものは外してバランスを調整しました。

M⑧「Forever Student」

勢いよく完成したイントロ・フレーズ

昔の名機をエミュレートしたソフト・シンセを買って、使いたいプリセットを探す中で、一発目にハッとなった音でバーッと弾いてできたのがイントロのフレーズです。そして、それがそのまま曲の完成に結びつきました。音源を買っていろいろ使っていく中で良い音色にたどり着くこともあるけど、最初に“これだ!”と思ったもののパワーはデカいなと思います。

M➈「Expert」

ハイハットの裏表でトラックを分けてコンプ

このトラックは一番いじっていた印象があります。16分音符で刻んでいるハイハットは、全部一緒にコンプをかけると音の大きさが均一になってしまうので、表拍と裏拍でトラックを分けて、全部大小で切り分け、大きいところは大きいところで均一、小さいところは小さいところで均一になるようにしていました。当時はそのぐらいこだわっていました。でもそういうふうにやっていくことで自分が納得いくものになったので、無駄だとは思っていません。

M⑩「次会う時」

Spliceのサンプルをチョップ&フリップ

これもSpliceで見つけたサンプルをチョップ&フリップして、そこにドラムを入れていきました。トラックを置いておいた時間はなく、完成まで速かったと思いますね。自分の中では、「Knock」のトラックも好きだけど、これもだいぶ良かったです。やっぱりチョップ&フリップが好きなんでしょうね。すごくうまくできたなという感じがします。

M「New Phase」

ドラムレスの前半が後半の高揚感を高める

AIでサンプルを作って、それをチョップ&フリップしています。この曲はなかなかドラムが出てこないのがポイントです。最初からドラムを入れなかったわけではないのですが、ドラムが出てきたときの高揚感のようなものが欲しかったので、最終的にラップ部分はほぼドラムがないような形になりました。

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Release

『Project K』
KREVA

ビクター:VIZL-2409(初回限定版)
VICL-66037(通常盤)

Musician:KREVA(rap、all) 
Producer:KREVA、BACHLOGIC 
Engineer:KREVA、D.O.I.、BACHLOGIC、G.M-KAZ
Studio:Studio B.i.B.、monday night studio、Daimonion Recordings、P-STUDIO

 

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