曲線
曲線
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数学における曲線(きょくせん、英: curve, curved line)は、一般にまっすぐとは限らない幾何学的対象としての「線」を言う。[注釈 1] つまり、曲線とは曲率が零とは限らないという意味での直線の一般化である。
数学の様々な分野において、その研究領域に応じたそれぞれやや異なる意味で「曲線」の語が用いられる(から、精確な意味は文脈に即して捉えるべきである)が、それらの意味の多くは以下に挙げる定義の特別な実例になっているはずである。すなわち、曲線とは局所的に直線と同相であるような位相空間を言う。それは日常語で言えば、曲線は点の集合であって、それらの点が十分近くであれば直線のように見えるが、変形があってもよいというような意味である。数学の各分野で扱われる曲線の数は多岐にわたる。
最初に触れる曲線の簡単な例というのはほとんどの場合「平面曲線」(例えば平らな紙の上に描いた曲がった線)であろうが、螺旋のように三次元的なものもある。幾何学的な必要性や、例えば古典力学からの要請で任意次元の空間に埋め込まれた曲線の概念も必要とされる。一般相対論において世界線とは時空内の曲線である。
- 注
- 一般用語として、「曲線」が(成長曲線やフィリップス曲線の例に見るように)函数のグラフ、あるいはより多様な二次元図表の意味で用いられることがあるが、本項で言う意味とは(近い関連はあるにせよ)異なるものと理解すべきである。
歴史
曲線への関心が、それが数学的研究の主題となるよりずっと昔から存在したことは、先史時代までさかのぼれる芸術や日用品において装飾的に用いられる種々の例から見てとることができる[3]。曲線、あるいは少なくともそれらの視覚的表現は、例えば浜の砂に棒きれで描くように、容易に作り出せる。
古代ギリシアの幾何学者は多種多様な曲線を研究した。その一つの理由は、彼らが標準的なコンパスと定木を用いた作図を用いて解くことのできない幾何学的問題を解くことに関心を持っていたからである。
- 円錐曲線はペルガのアポロニウスが研究した。
- ディオクレスのシッソイドはディオクレスが研究し、立方倍積問題に用いた[4]。
- ニコメデスのコンコイドはニコメデスが研究し、立方倍積問題と角の三等分問題の両方に用いた[5]。
- アルキメデスの螺旋はシラクサのアルキメデスが研究し、角の三等分問題と円積問題に用いた[6]。
- spiric section (ペルセウスのトーラス曲線) はペルセウスの研究した、(アポロニウスの円錐曲線と同様に)平面による切断でトーラスの断面に現れる曲線である。
曲線論の基本的な進歩は17世紀に解析幾何学によってもたらされた。これにより曲線は、極めて精巧な幾何学的構成ではなく、方程式を用いて記述することができるようになる。これは新しい曲線を定義して研究できるようになるというばかりでなく、代数方程式を用いて定義できる代数曲線と、そうでない超越曲線という、曲線の形式的な区別も可能となることも意味する。それ以前には、曲線が「どのように生成されたか」または「どのようにして生成できるか」の別に従って「幾何学的」または「機械的」と記述されていた[3]。
円錐曲線はケプラーが天文学に応用した。 ニュートンも変分法の初期の例に取り組んだ。例えば最速降下問題や等時問題のような変分問題の解曲線として、新たな方法に関する曲線の性質が導入された(この例の場合は擺線)。懸垂線は吊るされた鎖の問題の解曲線としてその名がある。この種の問題は微分法の登場とともに機械的に扱えるものとなっていった。
一般に平面代数曲線論が始まるのは18世紀からである。ニュートンは、実点集合が「卵形」になることに関する一般記述において、三次曲線を研究した。ベズーの定理の主張は、当時の幾何学が直接的に扱えない数々の側面を示しており、特異点や複素数解も併せて扱う必要がある。
19世紀以降は独立した曲線論ではなく、射影幾何学や微分幾何学の一次元的側面として曲線が現れるようになる。後には位相幾何学でも扱われ、そのころには例えばジョルダン曲線定理は、複素解析において必要とされるだけでなく、極めて深い内容を持つものと理解されるようになる。空間充填曲線の現れる時代には、ついに現代的な曲線の定義が生み出されることとなる。
定義
一般に曲線は実数直線内の区間 I から位相空間 X への連続写像 γ: I → X を通じて定義される。写像 γ 自身を曲線と呼ぶか、γ の像を曲線と呼ぶかは文脈による。例えば位相空間論において写像自身を曲線と呼ぶのは、単に連続というだけの写像の像を曲線と呼ぼうとすれば、およそ一般的に言う意味での曲線とは思えないものまで曲線と呼ぶことになってしまうためである。他方で、可微分函数(あるいは少なくとも区分的に微分可能な函数)の定める曲線を対象とするならば、曲線と呼ぶのはふつう像のほうである。
- 曲線 γ が単純またはジョルダン弧であるとは、γ が単射(すなわち x, y ∈ I が γ(x) = γ(y) を満たすならば必ず x = y)となることを言う。ただし、I が有界閉区間 [a, b] のときには、γ(a) = γ(b) となることは許す(このように約束すれば、単純閉曲線について述べることができる)。日常語で言えば、「自分自身と交叉することがなく、また途切れたりもしていない」曲線が単純曲線である[7]。
- (I の端点以外の)適当な x ≠ y で γ(x) = γ(y) となるならば、γ(x) はこの曲線の多重点(少なくとも二重点)と呼ばれる曲線の特異点である。
- 曲線 γ が閉あるいはループであるとは、I が有界閉区間で、それを [a, b] と書けば γ(a) = γ(b) となるときに言う。したがって、閉曲線は円周 S1 の連続像になっている。単純閉曲線はジョルダン曲線とも呼ばれ、ジョルダン曲線定理はジョルダン曲線が平面全体を「内側」と「外側」の二つに分けることを述べるものである。
平面曲線は X がユークリッド平面、場合によっては射影平面であるような場合の曲線を言う。空間曲線は X が三次元の空間(ふつうはユークリッド空間)の場合を言い、非平面曲線 (skew curve) はどのような平面上にも載っていない空間直線を言う。これら平面・空間・非平面曲線の区別は実代数曲線にも適用できるが、代数曲線がここでいう曲線の定義を満たさないことは注意すべきである(たとえば実代数曲線は不連結になりうる)。
ここでの曲線の定義は、幅が無く途切れもない直線のような連結で連続な図形という曲線に対する我々の直観的概念をよく捉えているものになっているが、一般的な意味では曲線とはいいがたい病的な図形も含まれてしまう。例えば、平面上の正方形を像が被覆するような曲線(空間充填曲線)が存在する。単純平面曲線の像が一つ大きいハウスドルフ次元を持ち得る(コッホ雪片を参照)し、さらに正のルベーグ測度さえ持ち得る[8](それはペアノ曲線の構成を少し変更すれば作れる)。ドラゴン曲線はもうひとつの変な例である。
曲線の長さ
X を n-次元ユークリッド空間 Rn とし、曲線 γ: [a, b] → X は単射かつ連続的微分可能とすれば、γ の長さ (length) とは
- Famous Curves Index, School of Mathematics and Statistics, University of St Andrews, Scotland
- Mathematical curves A collection of 874 two-dimensional mathematical curves
- Gallery of Space Curves Made from Circles, includes animations by Peter Moses
- Gallery of Bishop Curves and Other Spherical Curves, includes animations by Peter Moses
- The Encyclopedia of Mathematics article on lines.
- The Manifold Atlas page on 1-manifolds.
- Insall, Matt; Stover, Christopher; Weisstein, Eric W. "Curve". mathworld.wolfram.com (英語).
- Curve - PlanetMath.(英語)
- Parkhomenko, A.S. (2001), “Line (curve)”, in Hazewinkel, Michiel, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4
- Golubov, B.I. (2001), “Rectifiable curve”, in Hazewinkel, Michiel, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4