全664文字

購入した電子機器や工業製品の修理時に購入者の裁量を広く求める権利。メーカーの認定修理業者だけでなく、購入者自身や第三者の修理業者が修理できるようにする。欧州や米国で制度の導入が進みつつある。

 購入製品を購入者本人、または購入者が選んだ業者が修理できる「修理する権利(Right to repair)」の議論が欧州や米国で活発化している。修理期間の短縮や費用低減、製品の長期利用によるごみ削減などの効果が期待されている。

EU理事会と欧州議会は2024年2月、「修理する権利」の導入について合意した。合理的な価格・期間での修理、修理に必要な部品や情報の提供などがメーカーに義務付けられる(出所:欧州議会のプレスリリース)
EU理事会と欧州議会は2024年2月、「修理する権利」の導入について合意した。合理的な価格・期間での修理、修理に必要な部品や情報の提供などがメーカーに義務付けられる(出所:欧州議会のプレスリリース)
[画像のクリックで拡大表示]

 EU理事会と欧州議会は2024年2月、消費者の「修理する権利」の導入について合意した。これにより合理的な価格・期間での修理、修理に必要な部品の提供、修理に関する情報公開、中古品などを使用した修理を妨げることの禁止などがメーカーに義務付けられる。これはEUで対象製品を販売する日本企業も対象だ。

 フランスは2021年、パソコンやスマートフォンを含む家電製品に、修理のしやすさを10段階評価した「修理指標」を導入、製品購入の判断基準として利用できるようにした。同指標はベルギーでも導入が決定し、EU全域に拡大する議論も行われている。

 米国では州ごとに議論が進む。2024年3月、オレゴン州議会下院で「修理する権利」を認める法案が可決された。同様の法案は既にニューヨーク州、カリフォルニア州、マサチューセッツ州などでも可決されており、今後も拡大しそうだ。こうした動向を受けて、米アップルや米グーグルは自社製のスマートフォンに関して、修理に必要な部品や専用工具、マニュアルなどの情報を提供する方針を明らかにしている。