コロナ禍で4月の経済指標は大きく悪化したが、5月半ば以降、順次、緊急事態宣言が解除されたことで、5月の消費者態度指数は上向きに変わった。谷は深いにしても、底を打って、回復の過程に入っていく。そのスピードは、意外に早く、6月には3月の水準まで戻るのではないか。打撃は大きいものの、実態を冷静に捉えることも必要だろう。そこから先は、消費増税後の成長力が試される。停滞のレの字がメイン・シナリオとなるが、10万円給付金の経済対策がどのくらい効くかにもよる。
………
4月の商業動態・小売業は前月比-9.4と大きく低下した。落ち込み幅は、3,4月で-14.1にも及び、東日本大震災時より大きいけれども、名目の水準は同じくらいである。業種別では、巣ごもり消費もあって、飲食料品が+1.4だった一方、衣服等が-31.8、自動車-25.3と記録的な低下だった。ただし、これらは、外出自粛が緩和されれば、消費ができないものではないので、戻りは早いと思われる。
また、当然ながら、4月の鉱工業指数では、消費財生産の前月比が-9.8となり、これだけ絞っても在庫は急増して、その結果、5月の予測も-7.9と一段の下げとなっている。ここで、やや意外なのは、4月の資本財(除く輸送機械)が+0.3、建設財が-1.4と、早くも下げ止まりが見られることだ。5月の予測も、それぞれ+2.8、+1.0となっている。製造業は、コロナ禍での傷は浅いわけだし、消費財にしても、6月以降は、戻りが期待できるのではないか。
ちなみに、資本財(除く輸送機械)の過去4か月間の低下幅-9.7は、リーマンのときの1/3程でしかなく、東日本大震災直後や野田政権下での景気後退と同レベルである。それらも大変な事態だったし、今回は非製造業の打撃が大きいという事情もあるが、今回のコロナ禍を未曽有の事態として、あまり深刻にならず、過去にも例があるものだと、相対的に見ることも必要と考える。
そして、雇用については、4月の労働力調査は、就業者数が前月比-107万人と大幅な低下となった。そのうち、女性が-70万人と過半を占める。就業者数の約6,600万人という水準は、約2年前の2018年2月以来となる。こちらも、大きな低下だが、リーマン・ショックを超える過去最大の景気の落ち込みと言われたりすることを思えば、まだ、この程度で止まっていると見ることもできるだろう。
そして、5月の消費者態度指数は、多少とは言え、反転を見せた。雇用環境は、前月比+1.8とわずかにプラスで、水準は16.8と、とんでもなく低いにしても、リーマンショック時の最低16.5をわずかながら上回った。リーマンの際は、毎月、3ポイント程の緩やかな回復であったが、今回は、落ち込みが急であったことと同様、戻りも足早に戻ってほしいし、その可能性は十分にあると考える。
(図)
………
今後、全住民に10万円という大実験が始まる。日経にもあるように、多くが貯蓄に回って、景気回復への効果は減殺されると見るのが普通だが、かつてなかった規模でもあり、どんな展開になるか、期待せずに見守りたい。むろん、しょせんは一回限りであり、成長のためには、後に続く再分配制度の整備が大事になってくる。再分配の乏しさゆえ、安い人件費、内需の低迷で、電子化が進まなかった日本だが、転機になるのだろうか。
(今日までの日経)
1位食品、2位貯蓄…生活防衛色濃く 10万円の使い道。年金改革法成立、高齢者就労後押し 受給開始の上限「75歳」。自民WT、9月入学見送り提言。 休業者 最多の600万人 4月経済統計、急激に悪化。企業支援、官民で94兆円 2次補正決定 「真水」は33兆円。
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4月の商業動態・小売業は前月比-9.4と大きく低下した。落ち込み幅は、3,4月で-14.1にも及び、東日本大震災時より大きいけれども、名目の水準は同じくらいである。業種別では、巣ごもり消費もあって、飲食料品が+1.4だった一方、衣服等が-31.8、自動車-25.3と記録的な低下だった。ただし、これらは、外出自粛が緩和されれば、消費ができないものではないので、戻りは早いと思われる。
また、当然ながら、4月の鉱工業指数では、消費財生産の前月比が-9.8となり、これだけ絞っても在庫は急増して、その結果、5月の予測も-7.9と一段の下げとなっている。ここで、やや意外なのは、4月の資本財(除く輸送機械)が+0.3、建設財が-1.4と、早くも下げ止まりが見られることだ。5月の予測も、それぞれ+2.8、+1.0となっている。製造業は、コロナ禍での傷は浅いわけだし、消費財にしても、6月以降は、戻りが期待できるのではないか。
ちなみに、資本財(除く輸送機械)の過去4か月間の低下幅-9.7は、リーマンのときの1/3程でしかなく、東日本大震災直後や野田政権下での景気後退と同レベルである。それらも大変な事態だったし、今回は非製造業の打撃が大きいという事情もあるが、今回のコロナ禍を未曽有の事態として、あまり深刻にならず、過去にも例があるものだと、相対的に見ることも必要と考える。
そして、雇用については、4月の労働力調査は、就業者数が前月比-107万人と大幅な低下となった。そのうち、女性が-70万人と過半を占める。就業者数の約6,600万人という水準は、約2年前の2018年2月以来となる。こちらも、大きな低下だが、リーマン・ショックを超える過去最大の景気の落ち込みと言われたりすることを思えば、まだ、この程度で止まっていると見ることもできるだろう。
そして、5月の消費者態度指数は、多少とは言え、反転を見せた。雇用環境は、前月比+1.8とわずかにプラスで、水準は16.8と、とんでもなく低いにしても、リーマンショック時の最低16.5をわずかながら上回った。リーマンの際は、毎月、3ポイント程の緩やかな回復であったが、今回は、落ち込みが急であったことと同様、戻りも足早に戻ってほしいし、その可能性は十分にあると考える。
(図)
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今後、全住民に10万円という大実験が始まる。日経にもあるように、多くが貯蓄に回って、景気回復への効果は減殺されると見るのが普通だが、かつてなかった規模でもあり、どんな展開になるか、期待せずに見守りたい。むろん、しょせんは一回限りであり、成長のためには、後に続く再分配制度の整備が大事になってくる。再分配の乏しさゆえ、安い人件費、内需の低迷で、電子化が進まなかった日本だが、転機になるのだろうか。
(今日までの日経)
1位食品、2位貯蓄…生活防衛色濃く 10万円の使い道。年金改革法成立、高齢者就労後押し 受給開始の上限「75歳」。自民WT、9月入学見送り提言。 休業者 最多の600万人 4月経済統計、急激に悪化。企業支援、官民で94兆円 2次補正決定 「真水」は33兆円。