今日の「核心」では、論説委員長の平田育夫さんが池田勇人の所得倍増計画に触れていたので、成長政策とは何なのかについて、少し言及したくなった。過去をどう評価するかは、現在に関わる問題でもある。
「所得倍増」の意義は、政治が積極的な目標を掲げたことにある。学界などの物価高に対する懸念を押し切り、高成長を目指したことが結果的に日本経済を飛躍させた。むろん、物価も上がったのだが、代わりに日本の宿痾と言われた農村の潜在的失業者を一掃するという大きな成果も挙げた。これが国民の支持を得ることにもなったのである。
なお、インフラの投資については、これを怠らなかったことは評価できるものの、経済に重きを占めるのは、オイルショック後の中度成長の時代になってからである。また、中小企業政策は、成長促進も然ることながら、再分配や政治面で評価すべきものであろう。
他方、池田勇人の政策で見逃してならないのは、資本や貿易の自由化への対応で、大企業をも叱咤したことである。保護を求めがちな経済界に対して、明確なビジョンを掲げて対応させたことが国際競争力を強化することになった。
池田勇人の経済政策を一言でいうと、積極財政と自由化になる。平田さんの論は、財政再建と規制緩和・法人減税の組み合わせになると思うので、成功を収めた過去の政策とは、符合する部分と、しない部分の両方があるということになろうか。
さて、デフレギャップのある今、必要なのは積極財政である。議論すべきは、どこまで成長率が回復したら、どんな増税策を採るかを決めておくことだ。規制緩和については、業界ごとに事情が異なる。新エネの供給増大、コメ価格の低下、医療費の増嵩など、緩和したときの対応策のビジョンが必要だ。
また、世代間の不公平論については、まったく的外れなので、これは筆者の「小論」を見ていただきたい。問題は、世代間にはなく、少子化にある。少子化の度合いが世代で違うため、世代間の問題に見えるだけのことである。
池田勇人と今の政治で異なるのは、経済より財政を優先したり、自由化へのビジョンがぼやけていたりと、問題の本質を捉え切れてないことにある。今の常識を超えなければ、展望は開けない。ちなみに、池田勇人の政策や下村治の理論は、当時、異端のものであったことは言い添えておこう。
(今日の日経)
第一生命・希望の部署で1週~1ヵ月。経済教室・税の表示法・大竹文雄。トヨタHV倍増100万台。核心・日航はあすの日本・平田育夫。
「所得倍増」の意義は、政治が積極的な目標を掲げたことにある。学界などの物価高に対する懸念を押し切り、高成長を目指したことが結果的に日本経済を飛躍させた。むろん、物価も上がったのだが、代わりに日本の宿痾と言われた農村の潜在的失業者を一掃するという大きな成果も挙げた。これが国民の支持を得ることにもなったのである。
なお、インフラの投資については、これを怠らなかったことは評価できるものの、経済に重きを占めるのは、オイルショック後の中度成長の時代になってからである。また、中小企業政策は、成長促進も然ることながら、再分配や政治面で評価すべきものであろう。
他方、池田勇人の政策で見逃してならないのは、資本や貿易の自由化への対応で、大企業をも叱咤したことである。保護を求めがちな経済界に対して、明確なビジョンを掲げて対応させたことが国際競争力を強化することになった。
池田勇人の経済政策を一言でいうと、積極財政と自由化になる。平田さんの論は、財政再建と規制緩和・法人減税の組み合わせになると思うので、成功を収めた過去の政策とは、符合する部分と、しない部分の両方があるということになろうか。
さて、デフレギャップのある今、必要なのは積極財政である。議論すべきは、どこまで成長率が回復したら、どんな増税策を採るかを決めておくことだ。規制緩和については、業界ごとに事情が異なる。新エネの供給増大、コメ価格の低下、医療費の増嵩など、緩和したときの対応策のビジョンが必要だ。
また、世代間の不公平論については、まったく的外れなので、これは筆者の「小論」を見ていただきたい。問題は、世代間にはなく、少子化にある。少子化の度合いが世代で違うため、世代間の問題に見えるだけのことである。
池田勇人と今の政治で異なるのは、経済より財政を優先したり、自由化へのビジョンがぼやけていたりと、問題の本質を捉え切れてないことにある。今の常識を超えなければ、展望は開けない。ちなみに、池田勇人の政策や下村治の理論は、当時、異端のものであったことは言い添えておこう。
(今日の日経)
第一生命・希望の部署で1週~1ヵ月。経済教室・税の表示法・大竹文雄。トヨタHV倍増100万台。核心・日航はあすの日本・平田育夫。