5/21 unkie『Plug it!』@渋谷チェルシー・ホテル
「But Still Beginning」がリリースされて以来、とにかく次のアクションが待ち遠しかった。以前お届けしたインタビューでも、unkieの3人は「今になってようやくバンドの体制が整った」と話してくれていたが、聴き手である僕個人も、あのシングルによってunkieへの期待感は一気に高まった。というのもこのバンド、各々のプレイヤビリティを考えれば音楽的にはどんな方向にも進めるだけに、「もしかすると落とし所が定まらないまま活動を終えてしまうんじゃないか」という不安が正直あったのだ。しかしそれも今となっては杞憂に過ぎなかったようだ。TOKIE、青木裕、城戸紘志という屈指の演奏家達がこのバンドで目指すものはただひとつ。日本のポップ・シーン全体を視野に入れたインストゥルメンタル・ロックの新たなスタンダードを打ち建てる事だ。ヴォーカルなしのスタイルでマス・アピールを狙う事の難しさはもちろん承知の上で、彼らはそこに挑もうとしている。その最新の経過報告である「But Still Beginning」は、彼らがその糸口を掴みつつある事を証明して見せた、まさに会心の一撃だった。
そんなunkieが定期開催の自主企画イベント『Plug it!』をスタートさせるという事で、早速その記念すべき第1回目に足を運んできたのだが、これがまた彼らの強い野心を感じさせられる素晴らしい内容だった。このイベントはゲスト→unkie→両バンド混合編成のセッションという流れで行われるもので、初回のゲストは先頃渋谷AXでのワンマンを成功させ、日を追う毎に注目度を高めているPeople In The Box。まず両者のステージを見て感じたのは、どちらも同じく3ピース編成ながら、アンサンブルの方法論はまったく異なるという事。緻密なアレンジメントとエフェクティヴな音色を駆使してオーケストレーションを奏でるPeople In The Boxに対して、unkieはむしろ3ピースならではのソリッドで引き締まった演奏に徹している。そういったごまかしの効かないサウンドで次々と起伏に富んだフレーズやリズム・パターンを叩き出していくのだから、とにかく緊張感が半端じゃない。一聴してキャッチーな印象が強い彼らの楽曲は、実際はかなり難易度の高いアンサンブルに裏打ちされたものなのだと改めて感じた。
青木裕がインタビューで「どんな環境でも自分達の音楽はこの3人でコントロール出来ると確信した」と語っていたが、それが大げさでも何でもなかったと痛感させられたのが、最後に行われた混合編成のセッション。ここではunkieから「Chinese Red」、People In The Boxからは「火曜日/空室」と1曲ずつを6人による演奏で披露したのだが、これがPeople In The Boxの3人が作るサウンド・スケープをしっかりと前面に出していながらも、根底に蠢くヘヴィなグルーヴはunkie以外の何物でもないという、見事にこの体制でしか鳴らせないサウンドに仕上がっていた。 彼らは今回を皮切りに、毎回異なる色合いを持ったゲストを招集しながら、この『Plug it!』でセッションを重ねていくようだ。このセッションを彼らがどのように血肉化していくのか興味は尽きないし、次の開催でもunkieはまた新たな一面を見せてくれるだろう。お楽しみはまだまだ始まったばかりだ。(text by 渡辺裕也)
Plug it!
2010/05/21(金)@渋谷 CHELSEA HOTEL
unkie / People In The Box
「Plug it !」Vol.2 開催!
2010/07/16 (金)@渋谷 CHELSEA HOTEL
open 18:30 / start 19:00
前売 3,000円(ドリンク代別)
ゲスト:LEO今井 / 菜花知美(from detroit7)