さらなる躍進、勝算のある未来への一手──FINLANDS新作EP『UTOPIA』独占ハイレゾ配信
2018年に3月に結成5周年を迎え、BALLOND'ORとのスプリットEP『NEW DUBBING』やフル・アルバム『BI』をリリース。リリース・ツアーにおいて、渋谷クラブクアトロを含むワンマン・ライヴをすべてソールドアウトさせるなど、着実と全国に拡がっているFINLANDS。そんな彼女たちから早くも新作が届いた。初のEP作品となった今作『UTOPIA』は、ツアーを経て作られた曲や初期曲の再録など全4曲収録した、いまのFINLANDSを表す1作となった。OTOTOYではハイレゾ独占配信を開始するとともに、塩入冬湖(Vo.Gt)へのインタヴュー敢行とレヴュー掲載の2ページ特集で大プッシュいたします! 結成6周年を迎えたタイミングで、渋谷CLUB QUATTROで開催される〈UTOPIA TOUR〉ツアー・ファイナルのライヴをもって、コシミズカヨ(Ba.Cho)が脱退することを発表した彼女たち。新たな活動へと進みはじめる彼女たちの"いま"をお見逃しなく。
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FINLANDS初のEP『UTOPIA』独占ハイレゾ配信!
INTERVIEW : 塩入冬湖(FINLANDS)
2018年は2ndフル・アルバム『BI』に加え、BALLOND'ORとのスプリット『NEW DUBBING』もリリース。その動きをますます加速させているFINLANDSから、早くも今年1枚目のニュー・マテリアルが到着した。このたび発表されるのは、彼女たちにとっては初のEPとなる『UTOPIA』。それぞれが異なるテイストを持ち合わせたサウンド。そして、複雑な対人関係をモチーフとしながら、そこで巻き起こる内省を綴ったリリック。4曲というコンパクトな構成のなかに明確なコンセプトも伺える本作について、FINLANDSの塩入冬湖に話を聞いた。
インタヴュー&文 : 渡辺 裕也
写真 : 大橋 祐希
他人が生み出してくれたユートピアでは満足できない
──まずは今作のタイトルについて教えてください。タイトル・トラック「UTOPIA」の歌詞を読んでみると、ここにはユートピア(理想郷)に対する懐疑的なニュアンスも含まれているように感じたのですが、実際はいかがですか?
塩入冬湖(以下、塩入) : 今作の裏テーマというか、私が『UTOPIA』で書きたかったのは「壮大な孤独」なんです。生きていれば誰もが感じるような、そういう孤独を書きたいなって。というのも、私自身がある時期にそれをすごく感じていたんですよね。「独りだな」って。
──その孤独感は、たとえばどんなときに感じたのでしょう。
塩入 : 昨年にツアーが終わった後、久々に休みができたんです。私はその休日をずっと待ち望んでたんですけど、いざ休暇に入ってみたら、どうも休み方がわからないというか、すごく不安になってしまって。ライヴや曲作り以外で自分を満足させられることがなにも思いつかないし、ずっとアドレナリンだけがでていて、そこに気持ちがまったく追いつかないような状態だった。そんなときにふと「独りぼっちだな」と感じたんです。もしかしたら私はこの孤独感を一生抱えていくのかなって。そういう感情とはじめて真正面から向き合ったことが、今作をつくるきっかけになりました。
──なぜその作品に『UTOPIA』と名付けたのでしょうか?
塩入 : たとえば、そういう孤独を恋愛とかで埋めようとすると、たしかにそれで埋まることもあるんですよね。でも、結局はそれってすごく刹那的なもので。私はそういう「ひとときの幸せを与えてくれるもの」がユートピアだと思ったんです。で、私はそのユートピアに対してどこか冷めているというか、他人が生み出してくれたユートピアでは満足できない自分がいる。つまり、結局は自分でどうにかしなきゃいけない。でも、その糸口が見つからない。そういうフラストレーションがあったんです。
──塩入さん自身が抱える問題と向き合う中で生まれたのが、今回の『UTOPIA』だったと。
塩入 : そうですね。そこはもう、自分を満たしていくことで解決するしかないなって。その作業をしているかなかで感じる孤独というのもありますけど、結局はやるしかないんですよね。なにか解決するために自分が変わるしかないんだとしたら、そうするしかないなって。私は変なところですごく現実主義というか、理想論だけでどうにかなることは少ないと感じていて。問題を解決するためにはなにか嫌な思いをすることも当然あると思うし、それがわかるからこその苦悩もありますね。いや、苦悩という言い方はちょっと違うかな。「めんどくさいけど、やらなきゃな」みたいな。そういう感じですね。
誰かに許してもらいながら生きていく必要なんてないと思うし、笑いたくもないのに笑わなくたっていい
──僕が思ったのは、『UTOPIA』は共依存がテーマでもあるのかな、と。恋愛にしても、お互いに寄りかかり過ぎることへの迷いとか不安について歌っているように聞こえたのですが。
塩入 : たしかにそういう側面もあると思います。それこそお互いを守り合うような関係性って、度を超えれば酷いことになる可能性もありますし。ただ、作品全体としてのテーマというか、孤独について歌いたいと思ったのは、2曲目の「call end」ができたのがきっかけだったんです。
──「call end」は今作でも際立ってエナジェティックな曲ですよね。
塩入 : そうですね。なんていうか、私は見栄をはることってすごく大切だと思ってて。それこそ私たちみたいなバンドマンが、「お金がない」とか「恋人にフラれた」みたいな心情ばかりを曲に綴っていたらイヤだし、やっぱり音楽を聴いてもらう側の人たちにはかっこよくいてほしいなって。ただ、それとは別で嘘をつきながら生きていく必要もないと思っていて。それこそ私にも今まで抱えてきた孤独や不安はたくさんあるんですけど、これまでは自分のそういう心情を書きつづったことってあまりなくて、むしろ意識的に避けてきたんです。でも、「call end」ではそこを解放してみたんです。ただ、そういう曲をじっくりと歌うのは恥ずかしいから、ここはめっちゃ叫んじゃおうと(笑)。
──それであんなにラウドな曲になったと(笑)。「call end」にはどんな心情が綴られているのでしょう。
塩入 : 私はみんなが悲しがっているとき、「この悲しみに自分も同調しなきゃいけないのかな」みたいに思うことがよくあるんです。「全員でおなじように悲しんだってなにも生まれない」と思ってしまう。で、そういう自分が嫌だなと思うこともあるし、寂しいときにその寂しさに浸れないのもすごく嫌なんですけど、それでも誰かに許してもらいながら生きていく必要なんてないと思うし、笑いたくもないのに笑わなくたっていい。そういうふうにずっと感じてたことを素直に書いてみた曲が「call end」ですね。
そのときに抱えていた嫉妬とか自己愛みたいな歪んだ気持ちが、何の悪びれもなく書かれてて
──では、3曲目の「衛星」についてはいかがでしょうか。
塩入 : 元々これは精神的なドメスティック・バイオレンスについて歌ってみようと思ってつくった曲なんです。つまり、「衛星」というのはどこにいようと自分のことを見張っていて、精神的な支配下に置こうとする他者の象徴。で、その衛星に見張られている女性の目線から書いてみた曲なんですけど、いざ出来上がったものを聴き返したら「これって、もしかすると私も衛星側なんじゃないかな」みたいに思い始めて。つまり、そこには相手を守りたいという過保護な気持ちがあるんです。そういう見方でいくと、私には両面の気持ちがわかるような気がしてきて。
──なるほど。
塩入 : それに「衛星」は恋愛以外のことにも置き換えられると思うんです。たとえば母親と子供の関係性にしてもそう。愛情が行き過ぎて伝わらなくなることってあると思うし、結果的にそれでお互いが離れていくことだってある。「衛星」はそういう場面にも起き抱えられるんじゃないかなって。
──4曲目の「天涯」も、ちょっと複雑な恋愛関係をモチーフとした曲ですよね。
塩入 : 元々これは7〜8年前につくった曲なんですけど、それを収録したアルバムが廃盤になってしまったので、今回もう一度レコーディングしてみました。
──かつて作った曲が、今作の「壮大な孤独」というテーマともリンクしていたということ?
塩入 : そうですね。私、新しい作品に取り掛かる前に昔の曲をよく聴き返すんです。それで久々にこの曲を聴いてみたら、そのときに抱えていた嫉妬とか自己愛みたいな歪んだ気持ちが、何の悪びれもなく書かれてて。それこそ今の自分だったらまずやらないだろうっていうくらいに、かなり大っぴらに嫌味なことも書いてるんです(笑)。
──当時そういう歌詞を書いた理由はいまでも覚えているのですか。
塩入 : はい。他者を意識していないというか、恋人がいるのにその人のことを見ず、恋人が以前に付き合ってた子のことばかりを見ているっていう。そういう若いときにありがちな恋愛について書いた曲で、それこそいまだったら本当にくだらないなと思うようなことなんですけど、やっぱりそのときの自分には一大事だったんですよね。で、それはそれでいいなと思えたんです。だって、これはもう今の私には書けない曲ですから。ああ、このときはこうだったなって。その当時の自分にしかできないこともあれば、もちろん今の自分にしかできないこともある。だから、今それができなくなったことを悲しいとは思わないし、そういう自分のルーツを辿る作業は時々すると、たまに度肝を抜かれるような曲がでてくるから面白いんです。1コードで最後までいっちゃうようなやつとか(笑)。
官能は孤独と表裏一体なんじゃないかなって
──『LOVE』リリースの際に取材させてもらったとき、塩入さんは「アルバムが完成したときが1年でいちばん無敵だと思える瞬間」だと仰っていました。今回はじめてEPというフォーマットの作品を完成してみて、その手応えはいかがでしたか。
塩入 : アートワークも含めて、作品ができたときの喜びは今までの作品となにも変わりませんね。ただ今回のEPに関しては、私自身がいろんなことに気づかされたというか。たとえば昨年にリリースした『BI』は、作り始める時点ですべての構成が自分のなかで決まっていて、最後まで悩むことなく作り上げたアルバムだったんですけど、『UTOPIA』は自分がこの作品に引っ張られながら出来たような感覚というか。それこそスタジオで曲を作っている時や、それをレコーディングしていくなかで徐々に理解が進んでいって、それで作品に対する熱がどんどん上がっていったんですよね。きっと明日また聴いたら今日よりもこの作品が好きになってると思うし、こうしてインタヴューで作品について話すたびに気づくこともホント多くて。うん、ゆっくり好きになってる感じですね。
──ちなみに、今作のアートワークはどんな感じになりそうですか? (このインタヴューの時点でアートワークは未着)
塩入 : アートワークは唇をモチーフにしてます。というのも、私は「UTOPIA」という曲をつくるときに「すごく官能的なものを作りたい」と思っていて。ただ、一方で私は人って生きてるだけで官能的だとも思うんです。たとえまったく知らない人であっても、その人の仕草とか行動がすごく美しくて、なおかつ自分の性を露わにしているように感じることってある。同時に、官能はそれに気づく人がいなければ成り立たないものでもありますよね。つまり、官能はひとりじゃ成り立たない。ということは、官能は孤独と表裏一体なんじゃないかなって。そういう話を、いつもアートワークをやってもらっている大川直也さんにしたら「今回は唇のモチーフでやろう」と。
──というのは?
塩入 : 大川さんは「UTOPIA」に「口から入る幸福感」をイメージしたと仰ってました。つまり、食べることや飲むこと、口づけをするとか、そういうことから生まれる幸福をイメージしたらしいんですけど、私はこのアートワークをみたとき、寂しさも感じたんです。ため息とか言葉なんかはまさにそうですよね。口から入ってくる幸せもあれば、口から出ていく寂しさもある。それがすごく描かれているアートワークだなって。
──今回のEPが発表されたら、またツアーが始まります。休暇をどうしていいかわからないという話もありましたけど、これからの活動については今どんなふうに考えていますか。
塩入 : うーん……。私は元々すごい面倒くさがりやの出不精なんですけど、バンドが動いているときは多分ずっとアドレナリンが出てるんですよ。なので、いざこうして動き出しちゃうと、このまま途切れることなく年末まで続いたほうが楽だなと思っちゃいますね(笑)。ちょっとでも空くとダレちゃうので、このまま動き続けていけることを今は望んでます。
編集 : 千田 祥子
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バンドはサービス業じゃない──FINLANDSにとっての「LOVE」は? 最新作『LOVE』をハイレゾ独占配信
https://ototoy.jp/feature/2017091503
LIVE SCHEDULE
ツーマン・ツアー〈UTOPIA TOUR〉
2019年3月15日(金)@福岡 Queblick
時間 : OPEN18:30 / START19:30
出演 : FINLANDS、TENDOJI
2019年3月19日(火)@大阪 JANUS
時間 : OPEN18:30 / START19:00
出演 : FINLANDS、Wienners
2019年3月21日(木・祝)@名古屋 JAMMIN
時間 : OPEN17:30 / START18:00
出演 : FINLANDS、マイアミパーティ
2019年3月30日(土)@仙台 HooK SENDAI
時間 : OPEN17:30 / START18:00
出演 : FINLANDS、THE イナズマ戦隊
2019年4月10日(水)@渋谷 CLUB QUATTRO
時間 : OPEN18:15 / START19:00
出演 : FINLANDS、indigo la End
ズーカラデルとのツーマン・ツアー〈UTOPIA TOUR〉
2019年5月19日(日)@横浜 F.A.D
時間 : OPEN17:30 / START18:00
2019年5月21日(火)@大阪 Shangri-La
時間 : OPEN19:00 / START19:30
2019年5月24日(金)@札幌 Sound Lab mole
時間 : OPEN19:00 / START19:30
その他ライヴ
2019年3月9日(土)@新宿SAMURAI
時間 : OPEN17:30 / START18:00
出演 : ミスタニスタ、LINE wanna be Anchors、shannons、FINLANDS
〈福岡 TENJIN ONTAQ 2019〉
2019年3月16日(土)@福岡市・天神地区ライヴハウス複数会場
詳細はこちらから
2019年4月6日(土)@京都GROWLY
時間 : OPEN18:00 / START19:00
出演 : GUE、FINLANDS
〈IMPACT!XIV supported by アルキタ〉
2019年4月20日(土)@札幌ライヴハウス複数会場
詳細はこちらから
2019年4月29日(月・祝)@吉祥寺WARP
時間 : OPEN18:30 / START19:00
出演 : 明日、照らす、FINLANDS OA:mabuta
〈RUSH BALL☆R〉
2019年5月12日(日)@大阪城音楽堂
詳細はこちらから
>>>ライヴ情報詳細はこちらから
http://finlands.pepper.jp/LIVE.html
PROFILE
FINLANDS
塩入冬湖とコシミズカヨからなる女性ロック・バンド。『RO69JACK』での入賞経験を持ち、一昨年辺りから全国各地で話題のフェスやイベント、大型サーキットフェスにも多数出演。早耳ロック・リスナーたちの間でたちまち話題となる。2015年に『ULTRA』『JET』と2枚のミニ・アルバム、2016年にはフル・アルバム『PAPER』をリリース。『JET』に収録の「さよならプロペラ」は北海道日本ハムファイターズのテレビCMに起用されるなどポピュラリティも併せ持つ。2017年ミニアルバム「LOVE」、2018年フル・アルバム『BI』とコンスタントに作品をリリースしオリコン上位に食い込む。『BI』リリース・ツアーのワンマン・ライヴにおいて、渋谷クラブクアトロをはじめ、追加公演含めすべてソールド・アウトさせた。
>>>公式HPはこちら
http://finlands.pepper.jp/
>>>公式ツイッターはこちら
https://twitter.com/Finlands12