子どもの頃の悩んでいる自分へ──そらるが豪華作家陣を迎え、珠玉の“声”の表現で描いた作品集
歌、作曲、作詞、エンジニアまで自身でこなし、まふまふとのユニット、After the Rainとしても活動を行うヴォーカリスト、そらる。2008年より動画投稿サイトで活動を開始し、動画の総再生数は3億再生を突破するなど、ネットのシーンを騒がせ続けるアーティストである。今回リリースされるアルバム『ゆめをきかせて』には、Kanaria作詞・作曲「ブルーパレット」に加え、Adoの楽曲“うっせぇわ”などで話題のsyudou、てにをは、すりぃ、黒魔、yukkedoluce、ナノウ、Neruなどボカロシーンで大活躍中の作家たちが手がけた楽曲が揃っている。彼はどのような想いで作り上げたのか。その秘密に迫った。
そらる『ゆめをきかせて』ハイレゾ配信中!
INTERVIEW : そらる
そらるのニュー・アルバム『ゆめをきかせて』は、ボカロシーンを中心に大活躍している様々なアーティストの楽曲が揃ったアルバムである。今作はジャンルの枠を飛び越えながらも、しっかり自分のスタイルに落とし込んだ楽曲からは、ヴォーカリストとしての表現力の高さを感じることができる。そらるは、作曲、作詞も自身でこなすことの人物だが、今作はなぜ他のアーティストに委ねるスタイルになったのか。今回のインタヴューでそのことについて尋ねると、今作の「子どもの頃の悩んでいる自分に送る1曲」というテーマに対する想いが浮かび上がってきた。歌い手として13年のキャリアを持つ彼は今後どのような活動をしていくのか、最後にゆめをきかせてもらった。
インタヴュー&文: 西田健
いちばん気持ちを入れて歌えるのは、自分が書いた曲とは限らない
──先日、久しぶりの有観客でのライヴ〈SORARU ACOUSTIC LIVE TOUR 2021 -きみのゆめをきかせて-〉が開催されました。ライヴの感想はいかがでしたか?
そらる : 久しぶりに有観客でのライヴをやれて、やっぱりこっちの方がいいなっていうのはありました。オンライン・ライヴをやることはあっても、やっぱり集まるのは難しいということで人を入れてライヴができなかったんですよね。全員マスクで声を出せないっていうのがあって、なかなか反応しづらいと思うんですけど、そのなかでも拍手をしてくれたりとか、楽しんでくれている様子はすごく伝わってましたね。
──そのライヴのなかで、今作にも収録されている楽曲“ゆめをきかせて”が披露されました。この曲はどういう思いで作られたんでしょうか?
そらる : 「子どもの頃の悩んでいる自分に送る1曲」をテーマにアルバムを作っていきました。書き下ろしをお願いしたり自分が曲を書くときに、どんなテーマだったら良い曲が揃ってくれるかを考えたんですけど、このテーマだったら良いアルバムになるんじゃないかと思って。子どものころってすごく悩みが尽きなかったりすると思うんですけど、このテーマなら、たくさんの悩んでいる人にも共感してもらえるアルバムになるじゃないかっていうのがありました。
──ということは、アルバムを作るテーマとして、この曲が誕生したみたいな流れなんですか?
そらる : そうですね。どんなアルバムにしようかというのをずっと考えていたときに思い浮かんだのが、このテーマでした。
──前作の『ワンダー』では、全ての作詞をご自身で手がけられていますが、今作では“ゆめをきかせて”のほかは、そらるさん以外の方が制作を担当されています。なぜ、こういうスタイルになったんでしょうか?
そらる : 自分がいちばん気持ちを入れて歌えるのは、別に自分が曲を書いたときに限らないなと。自分で書いた歌詞だから自分がいちばん上手く演じられるか、というとそうではなくて。今回のアルバムのテーマだと特に、いろんな人の経験だったり悩みだったりを作品にしたほうがアルバムに合っているなって思って。自分から出てくる悩みや解決法よりも、多くの人が書いた曲を自分が演じる形のほうがいい作品になるんじゃないかという想いがありました。
──自分だけじゃなく、いろんな方の悩みも集めて作品にしたいというイメージだったんでしょうか。
そらる : そうですね。なんか自分はすごく運が良くて、恵まれてるなっていう思いがあって。そんなに自分は不幸じゃないと思っているんですよね。どうしても自分の悩みって決めてしまうと、嘘くさくなってしまう気がして。
──なるほど。
そらる : それに活動を始めたきっかけも元々カヴァーからはじまっていて、自分で書いた曲より、自分が信用している人に書いてもらった曲のほうが上手く歌える、演じられるみたいな感覚も同時に感じていて。自分で曲を書いて歌うことがその曲をいちばん活かせるわけではないなっていう風にすごく思いますね。
──お話の中で“演じる”というワードを使われていますが、曲を歌うなかで“演じる”という意識がご自身のなかでもあるんでしょうか?
そらる : 曲に自分を重ねて歌うときに、その曲を解釈して自分なりに出す作業は歌う人であれば絶対にやることだと思うんですけど、それが演じるっていうことに近いなと思っていて。台本を読み解く感じというか。そうなったときにその台本を自分で書いてもいいし、そうじゃなくてもいいっていう。そこにあんまり差はない感じはしますね。