私達って、ギャンブラーだなと思った
――そして4曲目は、噂のメタルコアな「GAMBLER」。
マツリ:これぞ原点回帰な1曲です。シンセなどの飾りも入れず、アレンジャーもお願いせず、メンバーだけで作りました。私達、2018年に初めて『開花宣言』というEPを出したんですけど、その時代の曲が好きだった人に刺さる曲にしたかったんです。メジャーデビューした去年は、電子音にすごくハマっていたので、キラキラした華々しい曲ばかりだったんですけど、今年になって、前の気持ちに戻ってみるのもいいなと思いまして。あと一旦、自分が作りたいメタルコアを今だから極めてみたいなと思ったのが、この曲なんです。ユキナとも昔の自分達の気持ちを共有して……それこそ新宿ANTIKNOCKとかでライブしてた時代の葛藤とかを今、曲にしたいなって思ったんです。
――「轟音 揺らせ!賛否両論」や「不安 迷走 手探りだらけ」と歌詞にもありますね。そのタイトルが「GAMBLER」になったのはなぜ?
ユキナ:今はメジャーデビューもさせてもらってアップデートしてバンドを続けられているけど、やっぱライブハウスに出した初めの頃って、いろんな職業の選択の余地があったんですね。就職ももちろん考えたし、バンドをやりながらも、もっとこういう道もあるなと思ったりしてたんですよね。バンドって、いつ当たるか、売れるか、終わるか、何が起こるかホントに分からないじゃないですか。ちょっと前に進んだと思ったら、また戻って進んで、みたいな。ホントにルーレットを回している「人生ゲーム」みたいだし、私達ってギャンブラーだなと思ったんです。
ヘッツ:歌詞が出来たのを読んで、ホントにそうだったなぁと思いましたね。曲自体もまさに『開花宣言』時代の原点だったし。レコーディングでも当時を思い出して、「自分はその時より、バンドマンとしても人間としても成長したよな」と思いながら演奏してました。
チカ:私は去年から加入したので、『開花宣言』の時はメンバーじゃなかったですけど……人生のギャンブラーやってんな!っていうことは、最近よく思います。
マツリ:そうそう、それこそチカが一番ギャンブラーだよ。浜松でやっていたドラムの先生の仕事を辞めて上京して、いきなり花冷え。のデビューと海外ツアーをやって。
チカ:賭けでしたよね(苦笑)。
――その賭けには勝ててます?
チカ:勝ってます勝ってます(笑)。
ユキナ:良かったー!(笑)
――サウンド的にも、原点回帰のバンドサウンドとはいえ、凝ったことにいろいろ挑戦してますよね。
マツリ:ユキナのボーカルも、語りかける感じが多かったり。野太い男性も召喚させてたよね?(笑)
ユキナ:うん、あえてですね。ふざけました(笑)。
ヘッツ:シャウトもいろんな種類があるし。
マツリ:メロでは思い切り歌いつつ、ゴリゴリに仕上げてます(笑)。
――メタルコア好きは必聴ですね。そしてゴリゴリなサウンドのなかに、花冷え。らしいポップな遊び心が盛りこまれているのが5曲目の「いとをかしMyType」。
ユキナ:これは、今流行の「性格診断」をモチーフにして、ネットにどっぷり浸かって流行りに夢中になっていく現代人を、ちょっと皮肉っていて。まあ私達のことなんですけどね(苦笑)。そこに、平安時代っぽい和の雰囲気を混ぜて、ちょっと踊れちゃうような曲にしました。MVも衣装やロケ地がかなり和な雰囲気で、そこに令和を掛け合わせてます。
ヘッツ:衣装やメイクや髪型にも、平安だったり、和っぽいテイストと現代の流行りを色々まぜました!
――だから「いとをかし」と古風な言葉がつけられたんですね。ちなみに、皆さんもMBTI診断やってます?
ユキナ:歌詞の「うちら仲介者 論理学者 指揮官 領事」っていうのは、この4人のことなんですよ。「仲介者」で時々「運動家」の診断が出るのが私で。
ヘッツ:「論理学者」が私で。
マツリ:私が「指揮官」で。
チカ:「領事」です。でも、内容見たらみんなに気を配ってトークとか回す人なんですよ、領事。全然私、違うじゃないですか(笑)。
マツリ:いやでも、領事って縁の下の力持ちでもあるから、ドラムのチカに合ってるよね!
――ヘッツさんの「論理学者」はイメージありますね。いつも何かを考えてる感じが。
ヘッツ:そうですね。いっぱい色々考えて、考え過ぎちゃって、結局、出てくる言葉はめちゃめちゃシンプルで、大した言葉じゃなかったりします(笑)。
マツリ:そう、そういう意味では当たってるかも知れないんですけど、診断が全てじゃない!と。結構、若い子達を見てると、プロフィールに自分の診断結果を書いてたりするんですよ。「自分ってそんな感じなのかぁ」とただ楽しむだけならいいんですけど、自分のことを決めつけすぎたり、のめり込みすぎちゃうのはどうかなって思うんですね。インターネットってそもそもライトに使うものだから、もっと自由にいなよ、みんな可愛いんだよって言いたかったです。
マツリ:ネットに入り浸りすぎてる自分達も、良くないなという。
ヘッツ:お風呂の中でもネット見ちゃって、朝も昼も夜寝る前も! 気がついたら3時間経ってたとかあるあるですね(笑)。
マツリ:みんな依存しがちだな、いとをかしだな(可愛いな)という意味の「いとをかし」なんです。
ユキナ:あと、MBTI診断ってもともと海外のものなので、去年対バンした向こうのバンドの子に聞いたら、欧米でも流行ってるらしくて。日本でも流行ってて、向こうの人も知ってることが曲にできたら面白いなと思いました。
――サウンド的にこだわったところは?
マツリ:タテ乗りよりも、ヨコ乗りのグルーヴ感にはこだわりました。ライブでも自然に、自由にノレるフロアになってくれたらいいなって。あと、冒頭のボーカルメロにはエフェクトを掛けてAIを意識して令和らしさを出しました。自分のギターの音色も、この曲ではちょっと変えていて。今って、昔のものがリバイバルで流行ったりしてるから、わざと昔のロックっぽいレトロなギターサウンドにしています。
――エフェクターで綺麗な歪みを出すんじゃなく、真空管アンプのゲインを上げて作るような。
マツリ:そうですそうです。荒っぽい音で遊んだレトロさも、平安時代感に繋がったかなと。あとは、1サビにはめちゃめちゃシンプルなブレイクダウンが入っているので、シンプルに楽しんでほしいですね。