(この原稿は、ちくまでの連載エッセイの冒頭に、新たに後半部分を書き足したものです) この前、対談をしている時に、苦手な本とか良さがわからない本が、ネットとかSNSとかで好意的に紹介されていたら、本当は違うのに、どうしても世の中全てがそれを勧めているみたいな感覚になって、つらい気持ちになるんじゃないか、っていう話をしていて(私の本が苦手な人は確実にいるっていう話の流れからです)、ああ、やっぱり本屋さんならその横に「私はこっちの方がいい気がする!」って思える本が並んでいるからいいよね、本屋さんはずっとあってほしいな、と思っていた。リコメンドはとても参考になるけれど、リコメンドだけで他が見えない空間と、他の本とともにポップでリコメンドがある本屋さんはやっぱりちょっと違っている。私の本が苦手な人はいて当たり前だし、むしろ、苦手な本があるっていうことは、自然なことだと思っている。芸術や文化の前に立つ