「光を当てるだけで物質が磁石になる」という話を聞けば、多くの人は驚くでしょう。 私たちが普段イメージする磁石といえば、冷蔵庫にくっつく金属片や、方位磁針に使われる小さな磁石などだからです。 そのような身近な磁石たちは光で磁石になったのではなく強力な磁場に晒すことで作られます。 ところが、アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)が行った最新の研究では、光を当てただけで、本来は磁石ではなかった物質に磁力を授けることに成功しました。 強力なレーザーパルスを照射して秩序や対称性を一時的に乱すと、思いがけない“瞬間的な相”が生まれる現象は、これまでも多く報告されています。 たとえば「光で超伝導を誘起する」「光で強誘電性を高める」といった例が挙げられ、近年の超高速レーザー分光技術の進歩に伴い次々と見つかっています。 しかし、それらの大半は文字通り“瞬間”で終わり、ピコ秒(1兆分の1秒)ほどしか持続