紛争勃発から10年が経過したシリア紛争であるが、政治・軍事的な紛争の帰趨が定まった後もシリア人民の生活水準の著しい低下、シリア移民・難民の境遇、イスラーム過激派とそれを支援・正当化する者たちの害悪などなど、悪い材料に事欠かない。一方、何の意味があるかどうかはさておき、「10年」という時間の経過のキリがよかったせいか、日本語でもシリア紛争についての記事がここ数週間多数発信された。ただし、その多くは少数の対象へのインタビューをもとにした記事であった。この手法自体は、少数の観察対象と信頼関係を構築し、それに基づいて「タテマエ」ではなく「ホンネ」を引き出すという専門的・職業的な手法の一つである。しかし、この手法はそれを実践する観察者が、証言者がもたらした情報に基づいて議論なり筋書きなりを構築するのか、それとも観察者が事前に抱いている議論や筋書きを肯定するためだけに「現場の証言」とやらを集めるのか、