紀伊國屋書店が出している「scripta」で、斎藤美奈子が橋本治の『桃尻娘』について書いている(連載「中古典ノスヽメ」第8回)。これはネットで読むことができる*1。 《『桃尻娘』は「小説現代新人賞」の佳作に入選した(受賞作ではなかったのだ)、橋本治、二九歳のデビュー作である。単行本の形で出版されたのは一九七八年。この小説が何より衝撃的だったのは、全編これ、女子高生の喋り言葉で書かれていたことだろう。書き出しから、この飛ばし方である。 〈大きな声じゃ言えないけど、あたし、この頃お酒っておいしいなって思うの。黙っててよ、一応ヤバイんだから〉、〈官能の極致、なーンちゃって、うっかりすると止められなくなっちゃうワ。どうしよう、アル中なんかになっちゃったら。ウーッ、おぞましい。やだわ、女のアル中なんか〉 三〇年前には「ぶっとんでいる」と感じた桃尻語(とはこういう言葉づかいのこと)も、しかしいまとなっ