♪せんば山にはタヌキがおってさ――。「あんたがたどこさ 肥後さ」で始まる手まり唄には謎がある。関東出身の記者も歌って遊んだ記憶があるが、熊本に赴任して、「せんば山」という名の山は県内に存在しないと知った。タヌキは一体、どこにいたのか。 熊本城の南、坪井川にかかる船場橋周辺には、あちこちにタヌキの銅像がある。橋の上、郵便ポストの上、市電の電停「洗馬橋」……。かつて船着き場があったことや川で馬を洗った逸話から「船場」や「洗馬」の名が残るが、山らしきものは見あたらない。 せんば山は、どこ? 資料や近所の人の話から探ると、様々な説が浮かんだ。川の土手の茂みや城下町の外れの丘を「山」と呼んでいたという説。インターネット上には県外の山だという説も。 熊本大学の稲葉継陽教授(歴史…