そのカッパは「昔、七つの海を制覇した」とのたまった。昔からこの辺りにいるカッパである。毎日川できゅうりをしゃくしゃくと意地汚く食べている。そんなしょぼくれたカッパが、いったいどうやって七つの海を制覇するというのか。 「海を渡ったのかい?」 「冗談じゃない。あんな塩っ辛い水なんて入ってたまるかい」 「じゃあ、どうやって制覇したのさ?」 私が問うと、カッパはきゅうりをもう一本要求してきた。私はスーパーの袋からきゅうりを差し出した。カッパは喜んでかぶりつきあっという間に平らげてしまう。そして、自慢げに語りだした。 「世界各地の海には人魚がいる。そいつは人間も知ってるだろ。あいつらはな人間と同じように好奇心が強い。日本にもな人間に化けた人魚がぼちぼちいるんだな。観光地なんかには特に多い。だが、所詮、人魚は海の生き物よ。水がなきゃ生きていけない。だから、定期的に水辺へやってくる。そこでそおっと近寄っ