以前雑貨屋で見た親子のやり取りをひとつ。 どうしても欲しくて、頼んで頼んでようやくお許しをもらった少女が選んできたのは、何種類かの昆虫を象ったシールだった。 体の模様にはキラキラした加工がされている。 少女にはまるでダイヤモンドのように見えたのかもしれない。 期待に満ちた表情で母親の元へ持っていくと、商品を目にした母親は吐き捨てるように言った。 「女の子が虫なんてやめてよ。本当にセンスないわね。」 わたしはこの瞬間、いくつかの可能性が消えてしまったことを悟った。 まず、母親に自分の好きなものを否定されたこと。 これは少女が母親から与えてもらう愛情に限界を感じてしまったのではないかということ。 親が思うより子供は、言われた言葉の意味をよく理解し、心の奥にしみ込ませながら生きている。 たった一言と思うかもしれないけれど、ふわふわのスポンジみたいな心には深い傷ができてしまっただろう。 それから、