デジタル映像技術の発達によって、現実と見まごうばかりの映像世界がスクリーン上に現れたとき、メディア作家が頭のすみで考えたのは、「これで新しい映像の文明が登場する」といったことだったのではないか。「やがてすべてのTVは3次元表示され、2次元画面上の遠近法表記は、古い世代の、よく考えればえらく抽象的な表現だと思われるにちがいない」。「ネットワークと高精細な映像技術が合体することで、現実とサイバースペースの区別がつかなくなる」。そんな未来像は、『マトリックス』以前から何度となく描かれてきた。 「文字で論理を伝えることも、やがて廃れていくかもしれない」。肯定的にせよ、否定的にせよ、そう考えた人々も少なくなかった。確かに出版産業の長期的な不振には、「文字を放棄しつつある人間」のイメージは投影しやすいだろう。テキストの様々な可能性をしたためて20年前から続く「運動」にもかかわらず、ちっとも普及しない「