【内容紹介】 東京、恵比寿で彼女と二人暮らしを始めた大学講師の〈僕〉は、幸せを噛み締める一方、名状し難い不安と居場所の不在に悩み始める。ある日、駒場で大学時代の恩師であり最高の文化貴族としてかねてから尊敬していた谷川教授と再会したことで、〈僕〉の意識に、ある変化が起こり始める……。 象徴闘争の駆け引きに満ちた研究生活の中で、真に自分らしい表現の場を「文学」にこそ見出しながらエクリチュールの彷徨を続ける現代人たちの苦悩する姿を描出した、アカデミックな野心的小説集。【装訂/門倉ユカ】 【目次】 Ⅰ. 「メタフォリカル・オートフィクション」 Ⅱ. 「エクリチュールの孤独」 Ⅲ. 「オブジェクトとしての倦怠」 Ⅳ. 「存在と形式」 Ⅴ. 「アナトールの嘘」