石井妙子(いしい・たえこ)/1969年生まれ。白百合女子大学大学院修士課程修了。著書に『おそめ』(新潮文庫)、『原節子の真実』(新潮社、新潮ドキュメント賞)、『日本の血脈』(文春文庫)、『満映とわたし』((岸富美子との共著・文藝春秋)などがある。 「順当に出世していった。それだけのこと」 今からわずか40年前のことである。1979年、大手デパート「高島屋」の石原一子は女性として初めて取締役になった。ざわつく世間を横に、彼女はこんなことを思う。 「私は誰よりも仕事が好きで誰よりも一生懸命働き、結果を残した。だから順当に出世していった。それだけのことだけど、こういった当たり前のことがニュースになるほどだったんです。当時の日本は。私は確かに働く女としてはトップランナーだった。だから、先頭にいる者の責任も感じていた」 今からわずか35年前のことである。1984年の国会で、旧労働省婦人局長の赤松良子
