森雅裕「高砂コンビニ奮闘記」を読んだ。 自由業の人が読んだら震え上がること必至。そうでない人も、明日は我が身だと感じるであろう、恐怖の書である。 著者の森雅裕は、1953年生まれの小説家。1985年、「モーツァルトは子守唄を歌わない」という作品で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー(一応書いておくと、乱歩賞は推理小説界で最大の権威を持つ新人賞)。著書は約30冊。推理小説のほかに時代小説も書いている。 爾来、四半世紀。各出版社との間でトラブルを重ね、いつしか著者は「文壇のはみ出し者」となっていた。本書の文面から察するに、著者の小説家としてのこだわりや自意識が原因のようだ。自業自得だと感じる人もいると思うが、個人的には、あまりの不器用さに同情を禁じ得ない。 講談社から刊行された江戸川乱歩賞全集に、著者の作品は収録されなかった。本の巻末には「著者本人の意向により」収録しない旨の断り書きがされた。著者に