なぜ、同じ「経営」をテーマとしながらも、経営の実務と学問としての経営戦略の間には、これほどまでに大きな隔たりが存在するのか。本連載では、長く実務の世界に身を置きながら、学問としての経営学を探究し続ける、慶應義塾大学准教授の琴坂将広氏が、実務と学問の橋渡しを目指す。第6回は、内部環境から経営戦略を考える「資源ベース理論」の流れがいかに生まれたのかを、ジェイ・バーニーを中心に考える。 連載「経営戦略を読み解く〜実務と理論の狭間から〜」の一覧はこちら。 産業組織論に原点を持つ競争の戦略は、市場そのものの成長が停滞したことにより、競合と顧客の熾烈な奪い合いに直面していた経営者に高く評価された。 しかし、1980年代も終わりに差し掛かると、産業構造はさらに不安定化し、外部環境の分析から戦略をつくり出すことの限界が叫ばれるようになる。産業構造の分析に基づいて自社のポジショニングを議論しているうちに、い