今夏フランスのコミックス研究者、ティエリ・グルンステンの著書『線が顔になるとき―バンドデシネとグラフィックアート』(古永真一訳、人文書院刊)の翻訳が発売され、続いて近い将来同じ著者によるより包括的な研究書『マンガのシステム』の翻訳も刊行が予定されている。まだかすかな兆しのようなものに過ぎないが、これはたいへん喜ばしいことである。 私はこれまでこのような海外におけるコミックス研究や批評の水位や情報、あるいは海外のコミックスそのものを無視して成り立ってきた日本のマンガ研究・批評の現状がおかしいのだと考えている。 伊藤剛から毎度説教しているようなことをいわれて大変不本意なので再度はっきり書いておくが、そもそも具体的な実体を把握しようともせずに1、2冊本を見かけたりした程度で「日本マンガの独自性」とか「海外のコミックスが日本マンガの影響を受けている」とか本来その辺を知らなきゃいえないようなことを断