神戸の児童連続殺傷事件の加害者である「元少年A」(32)=事件当時14歳=が出した手記『絶歌』(太田出版)に、轟々たる非難が起きている。本に対する評価は人それぞれだし、「こんなものは読みたくない」という人がいても当たり前。私が気になるのは、「遺族の許可なく出版すべきでない」「印税収入はすべて被害者に渡すための法律を作れ」などと出版に対する規制を求める動きや、行政が本の販売や購入の自粛を求めたり、貸し出し制限をする図書館も出るなど、表現の自由にもかかわる動きが出ていることだ。 置き去りにされた「表現の自由」 被害者の1人である土師淳君(当時11)の父親、守さんは、手記の出版に強く反発し、報道を通じて憤りのコメントを発表。出版社にも回収を求める書面を送った。土師さんは、出版によって「重篤な二次被害」を受けているとし、加害者による手記などの出版は「被害者の承諾を得るべきである」と主張している。
