文藝春秋1月号の浜田宏一「『アベノミクス』私は考え直した」というリフレ派からの「転向宣言」が話題を呼んでいる。朝日新聞も「アベノミクスよ、どこへ 理論的支柱の『教祖』が変節」とからかっている。リフレ派の教祖が、その終了を認めたわけだ。 これは奇妙な現象にみえるかもしれないが、今年のFRBのジャクソンホール会議で発表されたシムズの論文は、それほど衝撃的だった。これはインフレは貨幣的な現象ではないという事実を証明したからだ。 その論理は単純である。たとえば日本でマネタリーベースを2倍以上にしても物価が上がらないのは、政府が財政健全化のために単年度の財政赤字を縮小しているからだ。財政赤字は経済全体の超過需要なので、それが大きくなると需給ギャップが拡大して物価が上がる。 しかし日本のように大きな政府債務を抱えていると、政府は「財政赤字を減らす」といわざるをえない。人々は財政赤字が減って需給ギャップ