平成7年の阪神大震災後、建築を学ぶ一人の神戸大生が、千人超の犠牲者遺族にアンケートを実施した。犠牲者が出た建物のうち、耐震性の不十分な建築基準法の旧基準は9割超だった。「耐震補強こそ地震対策の要」。1年前の元日、能登半島の古い家屋が次々に倒壊し、その思いが再び頭をもたげた。 「住宅への耐震補強が人命救助に直結する」と話す藤江徹さん=大阪市西淀川区で(土屋宏剛撮影) 平成7年1月17日早朝、神戸大工学部建築学科の学生だった藤江徹(いたる)(52)は、下宿先で就寝中、「洗濯機の中に放り込まれた」ような揺れで飛び起きた。周囲の建物は軒並み倒れ、「日本が滅びた」と感じた。 兵庫県によると、阪神大震災の直接死5483人のうち72%が家屋の下敷きになった窒息・圧死とされる。「被災地の学生として震災に向き合う義務がある」。藤江は卒論に向け犠牲者が出た家屋を調べようと決断。犠牲者3651人の遺族にアンケー