核施設と非常事態−地震対策の検証を中心に−という故高木仁三郎氏の論文を読んだ。阪神大震災を踏まえて防災対策の見直しが行われていた時期に、なぜか原発震災の可能性についての議論が殆ど為されていないことを憂えた高木氏が、1995年に日本物理学会誌に寄稿した論文である。 僅か四頁の長さであるが、今日の福島原発震災を予見する洞察力に満ちた論文であり、今回起きた「想定外」の事故のすべてを、16年前に十分に起こりうるものであるとして、その科学的根拠を述べて警鐘を鳴らした論文である。 高木氏は、まず、原発の現行の耐震設計審査基準では「原発は本当に大地震に耐えられるかという疑問を強めざるを得ない」と警告する。 たとえば、阪神大震災の場合、大阪ガス(神戸中央区)で実測された地震の加速度は833ガルであったが、福島第一原発の一号機から六号機で想定している地震動は、設計用最強地震の加速度が176ガル、設計用限界地