三村太郎 日本人にとってなじみがありそうでまだまだその全貌がつかみ切れていないかもしれないキリスト教について、その核心を120ページほどのコンパクトな記述で提示してくれる本書は、一読すると分かるように、キリスト教のみに焦点を当てたものではなく、著者の山本さんの視座は思いのほか広い。その広さは、キリスト教をユダヤ教やイスラム教といった他の一神教と比較しつつ、旧約聖書と新約聖書との接続を総覧することで、キリスト教の特徴を明らかにする第1章で存分に発揮されている。このような比較宗教論の視点を踏まえて一神教としてのキリスト教という存在を捉えなければ、その核心は見えてこないのは言うまでもない。 ではキリスト教の核心とは何なのだろうか。著者の山本さんは、一貫して、「旅人としての人に寄り添う神」という視点から、古代から現代に渡るさまざまな事例とともにキリスト教の核心を提示してくれる。 最初の旅人はアブラ