大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

円・ドルが弱くなり、ユーロが強くなったのは、「規律」の違い

2007年12月11日 | ニュースの視点
EUのユーロ圏13カ国すべてが2007年に安定・成長協定(財政協定)違反を解消する見込みとなった。


なぜ、ユーロの全導入国が「3%基準」を満たすという素晴らしい結果を出せたのか?


なぜ、円とドルが弱くなり、ユーロが強くなるのか?これは非常に重要なニュースだ。


ひと言で言ってしまえば、ユーロ加盟国には、ユーロ導入のための厳しい条件をクリアしなければならないという明確な「規律」があることが大きい。


例えば、「財政赤字がGDPの3%以下」「債務残高がGDP60%以下」などを見ても、日本がクリアできていない厳しい条件だが、それらを見事にクリアしているのだ。


一方、日本やアメリカでは、このような明確な規律がないために、為政者が無駄遣いできてしまうというまさに野放図状態だ。


このような両者を比べたとき、今後どちらが強くなっていくのか?というのは、明々白々だ。


実際、06年の財政赤字(GDP比)の比較を見てみると、日本:4.3%、米国:3.7%、英国:3.0%、に対して、ユーロ圏:1.5%という数字になっている。


また、ユーロ圏各国の財政赤字(GDP比)の比較を見ても、軒並み赤字の割合は減少しており、フィンランド、アイルランド、スペインにいたっては、黒字転換しているほどだ。


このユーロの勢いに鑑みると、今後世界通貨が誕生するならば、それはユーロが機軸となる可能性が強いと思う。


そうなれば、日本円だろうが人民元だろうが、力を維持することは難しいだろう。


ルールなき野放図な日・米が、ルールを作り実直に守ってきたユーロ圏に敗北する構図は明らかだ。


これは政治を見ても強く感じる。まず、日本の政治家には、この事実を正しく認識することから始めてもらいたいと強く願う。