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ウイルスを追い詰める
ビッキー・ジェンセン
ビッキー・ジェンセンがウイルス学者になったのは、致死性のエボラウイルスと研究者が闘う実話を基にしたリチャード・プレストンの小説『ホット・ゾーン』を読んだのがきっかけだ。米メリーランド州の軍事施設内にある政府の感染症研究所に勤務。最も危険なウイルスを扱う「レベル4」の研究室で、治療薬やワクチンを開発している。
――普段の1日はどんな風に始まりますか?
朝起きたら、コーヒーは控えめにします。トイレに行きたくなったら、そのたびに7分間もかけて除染シャワーを浴びなければなりませんから。
――気密服も脱がないといけませんね。服はどういう仕組みになっていますか?
横に付いたホースから空気が送られてきます。与圧式なので、もし穴が開いても内側から外に向かって空気が噴き出して、ウイルスの侵入を防いでくれます。
――エボラ出血熱は一時ほど話題にのぼらないようですが。
インフルエンザと比べれば、死者の数はごくわずかです。でも致死率が極めて高く、治療法が確立していないので、バイオテロ対策の観点では非常に注目されています。
――エボラウイルスは、体液を介した感染しかしないのではありませんか?
今のところはそうです。ただ、エボラウイルスを空気感染させる方法を誰かが見つけないとも限りません。そうなれば最悪、インフルエンザのように拡散するでしょう。
――それほど危険なものを扱うのに、怖いと思ったことは?
実はあまりないんです。病弱だった息子の枕元に、エボラウイルスのぬいぐるみを置いたこともありますよ。「エボラより弱い菌を寄せつけないため」ってね。
――そのぬいぐるみ、息子さんはまだ持っていますか?
ええ。もう5歳になりますが、毎晩一緒に寝ています。