中居正広氏の「女性トラブル」とそれに対するフジテレビ関係者の関与の有無並びにその後のフジテレビの対応をめぐる問題(以下(フジテレビ問題」)が国内の話題をさらっている。フジテレビの経営陣による「2度目の記者会見」が10時間超にわたって行われたものの、事態は一向に鎮静化しない。
この問題は、有名タレント、フジテレビというマスメディア(テレビ局)、そこで働く社員という、ある意味特殊な世界、特別な「磁場」の中で生じたものである。ただ、これを「対岸の火事」として興味本位にのみ捉えることは、正しくない。タレントは主要な取引先、フジテレビは使用者である企業、社員は被用者(労働者)である。このように考えると、多くの企業にも当てはまる重要な問題が浮かび上がってくる。
フジテレビ問題の核心にあるのは、中居氏の「女性トラブル」の内容である。ただ、この内容の詳細については、中居氏、トラブルの相手方となった女性(以下「相手方女性」)、フジテレビの関係者がいずれも沈黙しており、現時点では明らかになってはいない。明らかとなっているのは、相手方女性が、フジテレビの上級管理職(いわゆるA氏)の紹介で中居氏と知り合い、その後、中居氏との間でトラブルとなった際に何らかの傷害を受け、その後治療を受け、最終的にフジテレビを退職した、ということのみである。
以下、上記の事実関係をもとに、企業法務に従事する弁護士の1人として、使用者である企業と労働者の関係に着目し、そこに生じる実務的な問題について述べてみたい。