2025年2月16日(日)

BBC News

2025年2月13日

約2000年前のローマ時代のロンドンで最初に造られたバシリカ(公会堂)の石壁の一部

レベッカ・モレル科学編集長、アリソン・フランシス科学担当主任記者

英ロンドンのオフィスビルの地下で建造物が発見され、この街で発掘された最も重要なローマ時代の歴史の一部だと評されている。

考古学者らはこのほど、古代のロンドンで最初に造られたバシリカ(公会堂)の、かなりの部分を発見した。約2000年前に建てられたこの建物では、政治、経済、行政の主要な決定が行われていた。

これまでの発掘で、バシリカの基礎を形成していた石壁の一部が明らかになっている。この建物は2.5階の高さがあったとされる。

この遺跡は、最終的には一般公開される予定で、ロンドンの起源に光を当てるものとなる。

ロンドン考古学博物館(MOLA)のソフィー・ジャクソン氏は、「これは非常に重要な発見だ。ここはローマ時代のロンドンの中心だ」と語った。同氏は今回の発見を、BBCニュースに最初に明らかにした。

「この建物は、ロンドンの起源、なぜロンドンが発展し、なぜイギリスの首都に選ばれたのかについて多くのことを教えてくれるだろう。本当に驚くべき発見だ」

この建物は、ロンドンのグレースチャーチ・ストリート85番地にある、再開発で解体予定のオフィスビルで発見された。

以前の考古学的調査で、古代バシリカのおおよその位置が判明していた。研究チームは今回、コンクリートの床の下に何が隠れているかを確認するため、小さな穴をいくつか掘った。

三つ目の穴をファイルキャビネットの間で掘っていた時、幸運にも今回の発見に至ったという。

「巨大なローマ時代の石造りの一部が見えるが、これがこれほど良好な状態で残っているのは驚くべきことだ。ここに、こんなに多くの遺物があることに、とても興奮している」と、ジャクソン氏は語った。

壁はイングランド南部ケント産の石灰岩で作られており、壮大な建物を形成していた。バシリカの大きさは、奥行き約40メートル、幅約20メートル、高さ約12メートルだったとみられている。

ほかにも、古代ロンドンの役人の印が押された屋根瓦などが発見されている。

このバシリカは、サッカー場ほどの広さの中庭を持つ、社交と商業の中心地であるロンドンのフォーラム(広場)の一部だった。

「バシリカはいわゆる市庁舎で、その前には大きな青空市場の広場があり、周囲にはさまざまな店舗やオフィスが並んでいた」と、ジャクソン氏は説明した。

「ここはビジネスを行い、裁判が開かれ、法律が制定され、ロンドンだけでなく国全体に関する決定がなされる場所だった」

この建物は、ローマ人がブリテン島に侵攻し、ロンドニウム(ローマ時代のロンドンの名称)を建設してから数十年後の、紀元80年頃に建てられた。

しかし、最初のバシリカとフォーラムは約20年間しか使用されなかった。その後、都市の発展と重要性の増加を反映して、はるかに大きな第2フォーラムに置き換えられたという。

この発見により、オフィスビルを所有しているハーツテン・プロパティーズは計画を変更することになった。

ローマ時代の遺跡は完全に発掘され、新しいオフィスに組み込まれる予定。計画の承認を待って一般公開されるという。

考古学的な遺跡を取り囲むように建物を再設計するには、いくつかの技術的な課題があった。

建築事務所ウッズ・バゴットのジェイムズ・テイラー氏は、「計画は全面的に修正された」と説明した。

「たとえば、柱の位置を文字通り移動させる必要があった。それから、地中で発見されたこれらの特別な石を破壊しないようにした」

また、遺跡を乱さないようにするため、エレベーターの数を減らす必要があった。その結果、建物の高さを下げることになったという。

しかしテイラー氏は、こうした努力には価値があると述べた。

「実際に人々がこの空間を利用し、楽しみ、バシリカを通り抜けて遺跡を見ることができるのは、本当に素晴らしいことだ」

シティ・オブ・ロンドン(金融街などがあるロンドン中心部)ではローマ時代の建物などが数多く見つかっている。そうしたなか、こうした遺跡を一般公開するための革新的な方法を見つける努力もなされている。

たとえばギルドホール・アート・ギャラリーでは、ガラスの床の下に円形劇場の一部が展示されている。ブルームバーグのオフィスでは、音と光のイマーシブ(没入型)インスタレーションで再現されたミトラス神殿を訪れることができる。

シティ・オブ・ロンドン自治体の職員、クリス・ヘイワード氏は、より多くの人々に、この過去と現在のつながりを体験してほしいと述べている。

「ローマ時代のロンドンが足元にあるという事実は、率直に言って、非常に驚くべき感情体験だ」

「実際にローマ時代のロンドンがどのようであったかを見て、想像することができる。そして外に出て、『今の高層ビルやオフィスビルを見てください』と言うことができる。これは進歩だが、同時に保存と結びついた進歩でもある」

(英語記事 Beginnings of Roman London discovered in office basement

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c98yz193m63o


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