薬剤師を「目指すきっかけ」はかなり現実的? ~現役薬剤師アンケート結果
「初心忘るべからず」初めて薬剤師として一歩を踏み出したあの日の気持ち、いつまでも大切にしておきたいですよね。
多忙な毎日、ふと「あれ? なんで私薬剤師をやっているんだっけ?」と、振り返って立ち止まりたくなる時もあるでしょう。今回、現役薬剤師56名に、「薬剤師になろうと思ったきっかけ」についてアンケートをとってみました。「そうだこんな素敵な職業だから薬剤師を目指したんだ」と、背中をそっと押すきっかけとなるなら幸いです。
第6位「薬で人々を救いたい」 3.6%
・医師は目の前の患者さんを救うことができるが、薬の開発は多くの患者さんを救うことができると思った。(40代・女性)
・パッチアダムス医療で解決できない、障害のある家族のQOL向上に役立ちたいと思ったため。(50代・女性)
新薬を開発したり、患者さんの症状に対して親身になって適切な薬を処方したり、新薬の開発に携わる事で、薬剤師は多くの人を救っています。そんな、薬剤師という仕事の原点とも言える理由で、薬剤師になりたいと思った方が大勢いらっしゃいました。
同率6位「本の影響」 3.6%
・ガン患者の闘病記を読んで、副作用のない薬を作りたいと思ったのが始まり。薬学を学びながら、服薬指導で患者さんと接する方へ思いはシフトしたが、がん患者さんを主に担当した際の副作用との関わり方は、初めて読んだ本の影響を受けている。(40代・女性)
・高校生のときに『パラサイト・イヴ』を読んで薬学部へ進学したいと思った。(30代・女性)
同率6位は、「本の影響」によって薬剤師を目指したという理由。コメントにある『パラサイト・イヴ』とは、ミトコンドリアが人間に寄生して反乱を起こすという、薬剤師でもある瀬名秀明さんによる小説ですが、まさかこれをきっかけに薬剤師を目指す人が出るとは、作者も予想していなかったのではないでしょうか。
第5位「学校の先生からの助言」 7.1%
・化学者を目指していた浪人時代に高校の化学の先生を訪ねると「化学にすすむのか。今は化学は就職が少ないぞ」と言われた。「では就職ができて、化学ができる学部はありますか」と聞いたら「薬学部かな」とつぶやくように言われたのがきっかけ。(50代・男性)
・理系で、免許も取れるからと高校の進学担当の先生から勧められた(60代・女性)
薬剤師になろうと思ったきっかけとして学校の先生に将来について相談した際に勧められたという方が多いようです。「就職ができて、化学ができる学部」と言う理由で、薬学部に興味を抱いた人も案外多いのでは?
第4位「家族に薬剤師がいた」 8.9%
・自分の母が薬剤師で、薬局を開業しており、地域のかかりつけ薬局として、1人で頑張っていたこと。(30代・男性)
・姉兄ともに薬剤師であるため必然的にそうなりました。(50代・男性)
・両親とも薬剤師で、子どもの頃に症状を伝えると自宅にある薬を選んで飲ませてくれた。症状が改善した時に、自分も薬を勉強して症状に合う薬を選べるようになりたいと思った。(40代・女性)
「家族の影響」で薬剤師を目指した、と答えた方も多くいらっしゃいました。回答を見てみると、やはり薬剤師になる方は、親など家族の誰かが薬剤師で、その影響を受け自然と「自分も薬剤師になる」と思うケースが多いようです。またそうでなくても、家族の苦労した話から、就職や転職のしやすい薬剤師を選んだという方もいました。
第3位「職が安定している」 10.7%
・バブルがはじけた後で将来に不安を感じていたし、自分には何も武器になるものがなかったから。大学進学を希望していたが何か一生ものの資格が欲しかったので薬剤師を目指した。(40代・男性)
・高校生の時に観たテレビでやっていた人生相談で、暴力夫や浮気夫に悩まされている相談者が異口同音に「働いていないから別れられない」というのを聞いて、仕事を持ち続けよう → そのためには資格 → 理科と数学が好きな自分が取れる資格はなんだろう → 薬剤師いいねという感じで進んだ。(40代・女性)
・「離婚しても手に職さえあれば生きていけるのだから、こんな離婚したくても出来ない人生を歩まなくてもすむわ」と母に言われた。(30代・女性)
・資格は必要だと高校生の時思ったが 、そう思ったきっかけは覚えていない。(50代・女性)
やはり薬剤師の魅力の一つは職業として安定している点ですね。しかしながら、バブル崩壊、家庭不和……と、その安定に魅力を感じたきっかけがが人それぞれなのは、大変興味深いですね。
第2位「薬剤師との交流」 16.1%
・某薬局薬剤師に症状を相談したらある医薬品を提案され、それを服用したらすぐに治ったことがきっかけ。(30代・男性)
・幼い頃に病気がちで通院していた際に、調剤の様子に心惹かれた。(50代・女性)
・子供のころ、風邪で高熱が出た際に病院に行って薬をもらうときに、薬剤師に「よく頑張ったね」と声をかけてもらえたのが今でも心に残っている。そんな薬剤師になりたいと思った。(40代・女性)
・学生時代に調剤薬局に寄った際に、薬剤師の仕事に魅力を感じた。(40代・男性)
原体験として、子供のころに薬剤師の優しさに触れたり、患者としてや助けてもらった経験が、薬剤師を目指すきっかけとなっていると回答された方が多かったです。紙数の制限上今回すべてを紹介する事は出来ませんでしたが、その他にもとても素敵なエピソードが多く、どこかの機会にご紹介できればと思っています。
第1位「きっかけはない」 39.3%
・たまたま薬学部に進学しただけで、当初は薬剤師に興味はなかった。(40代・男性)
・理科系に進みたかったが、物理が皆目理解できなかったのに対し、化学は学年トップだったので薬学部を選択した。(50代・男性)
・本当は医学部に行きたかったが、偏差値の問題で薬学部に来た。(30代・女性)
・養護教諭になりたかったけど間違えて薬学部を受験してしまった。(50代・女性)
意外にも(?)、「きっかけはない」という理由が全体の39%を占めて1位となりました。ただ、総じて「たまたま理系の科目、特に化学の成績が良かったから薬学部に入学した」という回答の多さが目につきます。薬剤師は国家試験の難易度といい、医療資格の中でも取得が大変困難な資格ですが、好きな勉強に打ち込んでいるうちに、自然とその道を目指していた人は、案外多いのかもしれません。
薬剤師アンケート集計結果まとめ~あなたが薬剤師を目指したきっかけは何ですか?~
改めてアンケート結果を1位より振り返ってみましょう。
「きっかけはない」、「薬剤師との交流」、「職が安定している」、「家族に薬剤師がいた」、「学校の先生からの助言」、「薬で人々を救いたい」、「本の影響」、「その他」となっています。
総じて、学生時代から現実的な人生設計やキャリアデザインを意識し、薬剤師を選択する方が多いようです。多くの方が、親や教師など、子供のころに接していた周りの大人たちに大きく影響を受けていることが印象的でした。また、職業の安定性やお金の面を考えるなど現実的な視点を持っていた方が多く、反対に夢や憧れから職に就いたという方は少ない結果となりました。
最後までお読みいただきありがとうございました。薬剤師としての初心を思い出していただく、一助となれましたら幸いです。
番外編 こんな意見も…少数意見を紹介
ここまで、アンケートのランキングごとに回答を見てきましたが、少数意見もご紹介したいと思います。
・医療が好きで、白衣を着た仕事に就きたかった。(30代・女性)
例えばCAさんの服装に憧れて職に就く方が多いように、白衣に憧れて薬剤師になる方もいるようです。
・解剖生理学の授業でドラッグデリバリーシステムについて勉強したのがきっかけ。(40代・女性)
・自分が薬の副作用で苦しんでびっくりした、不安になったから。(40代・女性)
・家族が重病になったので病気、薬についてしらべたいと思った。(30代・男性)
・病気をしたとき、薬を出来るだけ飲まないでよいようにしたくて薬剤師に興味を持った。(40代・女性)
薬で元気になったことや薬剤師の優しさに触れて薬剤師を目指す人もいれば、逆に薬で苦しんだことや家族の病気がきっかけで勉強を始めた人もいます。
・家庭との両立をするには適した職業で、肉体労働ではない。(30代・女性)
・薬剤師を目指したのは儲かると言われたから。(20代・女性)