薬剤師の年収はどれくらい? ほかの医療従事者と比較してみよう(2020年度版)
薬剤師の平均年収はいくらぐらいなのかご存知ですか。また、医師や看護師などほかの医療従事者と比べるとどうなっているのでしょうか。
薬局・病院といった職場別の観点で、薬剤師の年収事情についてみていきましょう。
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目次
- 1.薬剤師の平均年収は562万円
- ┕ 看護師よりも高い薬剤師の給料
- ┕ 性別・年代別に見た薬剤師の年収
- 2.薬局・病院・ドラッグストア-職場別の仕事内容と年収の特徴
- ┕ 薬剤師の働き方として最も多い薬局
- ┕ ドラッグストアの薬剤師は調剤ありかなしかで大きく変わる
- ┕ ドラッグストアの薬剤師の給料が高いわけ
- ┕ 調剤薬局併設の場合の注意点
- ┕ 病院の薬剤師の仕事は調剤・医薬品の管理から手術の参加まで多彩
- 3.キャリア志向・家庭重視・年収重視で変わる正社員・派遣・パートの選び方
- ┕ 長期安定の働き方・正社員
- ┕ 「多様な正社員」に注意
- ┕ 薬剤師が正社員で働くメリット・デメリット
- ┕ 実は時給の高い派遣
- ┕ 派遣は間接雇用の一種
- ┕ 派遣で勤務するメリット・デメリット
- ┕ 柔軟な働き方ができるパート・アルバイト
- ┕ 「パート」と「アルバイト」って違うの?
- ┕ 薬剤師がパート・アルバイトで働くメリット・デメリット
- 4.一段上の高給も可能になる「管理薬剤師」
- 5.まとめ:薬剤師の仕事について
1.薬剤師の平均年収は562万円
「賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は562万円です。また、平均年齢は36.0歳となっています。
これに加えて、厚生労働大臣の諮問機関である「中央社会保険医療協議会」は、病院・診療所について病院長・役員・医師・事務職員など12の職種に分けて、それぞれの年収を調査しています。また、保険薬局については同様に役員・管理薬剤師・薬剤師など5つの職種を調査しています。
看護師よりも高い薬剤師の給料
それらのうちから、薬剤師と比較しやすいものと一緒に年収をピックアップすると以下の通りになります。
一般病院
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保険薬局
|
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医師 | 14,908,54 |
–
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薬剤師 | 5,587,295 | 管理薬剤師 | 7,518,472 |
薬剤師 | 4,738,925 | ||
看護職員 | 5,072,054 |
–
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事務職員 | 4,213,648 | 事務職員 | 2,607,107 |
(「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告-令和元年実施」より作成。単位・円)
薬剤師の平均年収は、病院で5,587,295円、薬局で管理薬剤師の場合7,518,472円、一般薬剤師の場合4,738,925円となっています。
これは看護師や事務職員と比べても高い水準です。
また、メディウェルで掲載している求人票の募集内容から割り出した平均年収は……
- 調剤薬局=524万円
- 病院=477万円
- ドラッグストア=526万円
……でした。
(調査対象:『薬剤師転職ドットコム』2020年11月時点の掲載求人)
性別・年代別に見た薬剤師の年収
以上のように見てきた薬剤師の年収ですが、男女別・年齢別ではどのようになっているのでしょうか?厚生労働省が出している「賃金構造基本統計調査」を参考に見てみましょう。
年齢 | 勤続年数 | きまって支給する現金給与額(月給①) | 年間賞与その他特別給与額② | 年収(①×12+②) | |
---|---|---|---|---|---|
薬剤師・男性 | 全体 | 7.7 | 42.7 | 88.7 | 600.6 |
20〜24歳 | 0.5 | 27.8 | 2.3 | 336.2 | |
25〜29歳 | 2.7 | 34.9 | 78.2 | 496.4 | |
30〜34歳 | 5.4 | 40.6 | 93.6 | 581.1 | |
35〜39歳 | 7.7 | 46.3 | 98 | 653.6 | |
40〜44歳 | 9.8 | 46.2 | 98 | 652.1 | |
45〜49歳 | 12.9 | 49.8 | 106.1 | 704.2 | |
50〜54歳 | 11.7 | 51.9 | 96.5 | 719.2 | |
55〜59歳 | 16.2 | 51.9 | 107.4 | 729.9 | |
60〜64歳 | 14.4 | 45.7 | 59 | 607.2 | |
65〜69歳 | 16.3 | 37.5 | 94.6 | 544.6 | |
70歳〜 | 6.3 | 36.6 | 46.4 | 485.1 | |
薬剤師・女性 | 全体 | 8 | 38 | 79.8 | 535.7 |
20〜24歳 | 0.5 | 32.5 | 0.9 | 391 | |
25〜29歳 | 2.5 | 33 | 67.8 | 464.1 | |
30〜34歳 | 5.9 | 34.8 | 89.7 | 507.7 | |
35〜39歳 | 8.7 | 38.9 | 75 | 542.3 | |
40〜44歳 | 10.4 | 40.8 | 88.8 | 578.7 | |
45〜49歳 | 10.7 | 41.2 | 107.6 | 601.5 | |
50〜54歳 | 12.3 | 49.2 | 80.5 | 670.9 | |
55〜59歳 | 16.2 | 41.6 | 120.1 | 619.1 | |
60〜64歳 | 16.1 | 39.4 | 50.8 | 524.1 | |
65〜69歳 | 15 | 44.4 | 67.5 | 600.4 | |
70歳〜 | 14.8 | 40.6 | 29.5 | 516.9 |
(「令和元年賃金構造基本統計調査」の「職種別第2表」より作成。単位・万円)
全年齢を通じた男女別の平均年収では、女性の方がやや勤続年数が長いにもかかわらず、男性6,006,000円・女性5,356,600円と、男性の方が75万円ほど高くなっています。
また、35〜39歳に注目すると、男性6,536,000円に対し女性は5,423,200円で、90万円余りとそれ以上に大きな差が付いています。
共働きが当たり前になりつつある今でも、子育てなど家庭の仕事は女性に任されているという家庭もあります。働き盛りを迎えつつある男性と、家庭の仕事の負担のために本格的には働きにくい女性の差が出ているのかもしれません。
2.薬局・病院・ドラッグストア-職場別の仕事内容と年収の特徴
薬剤師の働き場所としては、保健所などの公的機関もあります。ただし、募集人数は限られています。ほかには、製薬会社を思い浮かべる人もいるかもしれません。
しかし、必要とされているのは薬剤師の資格所有者というよりも、薬学関連の修士号・博士号の所有者です。ほとんどの方は、薬局・ドラッグストア・病院から選ぶことになるでしょう。
薬剤師の働き方として最も多い薬局
最も多くの薬剤師が職場として選んでいるのが、薬局(調剤薬局・保険薬局)です。
薬局での薬剤師の仕事には調剤や患者さんに対する服薬指導、薬歴管理、病院や診療所との連携業務などがあります。
また、現在、国は在宅医療を推し進めており、薬局でも在宅医療に取り組む場合も増えてきています。総合病院の門前薬局と地域のかかりつけ薬局でも求められる役割が変わってくるため、薬局と一括りにいっても実際には仕事内容も多彩だといえます。
また薬局勤務では、土日勤務はなし・夕方の定時で終わるといった働き方も特徴です。一般的なサラリーマン・公務員と近いイメージの生活が叶えやすいとも言えます。正社員などフルタイムで働いている女性薬剤師の場合も、家庭との両立は比較的叶いやすいでしょう。
女性ならば「出産を機に薬局を退職した。子どもの手がかからなくなったので、10年ぶりに戻りたい」といったケースもあるかもしれません。
医薬品の世界は日進月歩のため、以前の職場と仕事内容が違ったりブランクが長かったりすると、知識をアップデートする必要があります。
また、仕事感の面でも不安を感じても不思議はありません。こういった場合は、研修制度が整っているところを探すようにしましょう。
一般論としては、個人経営のところよりも、会社化してチェーン展開しているところのほうが制度は充実している傾向にあります。
ドラッグストアの薬剤師は調剤ありかなしかで大きく変わる
ドラッグストアでは、医薬品だけではなく日用品・食料品などまで扱っています。
お客として利用する場合はほとんど意識することはありませんが、その中にも調剤業務が可能な職場と、そうでない職場があります。薬剤師が転職先・復職先として考える場合は大きな違いになります。
ドラッグストアの薬剤師の給料が高いわけ
かつては薬局以上に多くの求人があったのがドラッグストアです。これにはいくつか理由がありますが、主なものは次の2つです。
(1)大手チェーンによる新規開店が相次いだ。
(2)新卒者の就職先としても既卒者の転職先としても、あまり人気がなかった。
(1)による人手不足は今は落ち着いてきたようです。(2)については、以下のような点が原因になっているようです。
- 調剤が全くないか、あっても業務の一部でしかない
- 医薬品以外の商品陳列やレジ打ち・接客・在庫管理などまでやる必要がある
- 薬剤師として培った専門性を活かしづらい
- 午後8時や10時といった遅くまで営業していることが多い
- 早番・遅番といったシフトを組むのが一般的だが、中には人手不足で早番・遅番両方の通し勤務になるところもある
- 土日も必ず休みにはならないので、子どもなど家族との共通の時間が持ちにくい
ただ、この(1)(2)のおかげで、正社員や派遣・アルバイトを問わず、薬局や病院よりも高い給料での募集もあります。「収入を上げたい」という方には適した選択です。
また、長期ブランク後の復職を考えている薬剤師にもおすすめできます。人手不足気味なので、比較的簡単に好条件の求人が見つかります。また、いきなりの専門性の高い仕事も少ないので、その分復職への心理的なハードルも低くなるでしょう。
中には、「少し先で薬局での就職を考えている。その前に、ドラッグストアで時短勤務できる職場を探し、働く感覚を取り戻す」といった働き方をする人もいます。
一方で、OTCについては登録販売者の資格である程度賄えるようになってきていることもあり、調剤併設型以外でのドラッグストアでは薬剤師の求人が少なくなっている状況です。
調剤薬局併設の場合の注意点
ドラッグストアの中には、調剤薬局を併設しているところがあり、しかもどんどん増えています。
ただし、調剤業務ができることを重視して求人に応募するときは注意が必要です。ほぼ専任で調剤をやらせてもらえるところもあれば、その逆でほとんどOTCになっていることもあります。
もし、特に調剤にこだわりがあるのならば、面接のときなどにしっかりと確認するようにしましょう。
病院の薬剤師の仕事は調剤・医薬品の管理から手術の参加まで多彩
医薬分業が進みました。特に外来患者は病院で処方せんをもらい、それを元に院外の薬局で調剤してもらうのが当たり前になりました。しかし、今でも院内で調剤をするところも一部にはあります。
また、入院患者の医薬品については、病院勤務の薬剤師が主に担当します。外来患者にはほとんど使わない医薬品まであるので、薬局に勤務するよりも幅広い知識が必要です。
時には、手術に立ち会うこともあります。手術に使う医薬品や、医師が日常的に使う注射薬などの管理をするのも薬剤師の業務範囲です。医師や看護師とともに夜勤や当直をするような病院もあります。知的好奇心や向上心、やりがいは満たされやすいものの、タフな職場といえるでしょう。
特に近年はどこの病院でも「チーム医療」が強く意識されています。いっそう、自分の専門外のことまで把握する必要性は増しています。
以上のような働き方を踏まえると、病院薬剤師の給与は一般的に薬局薬剤師に比べてあまり割りが良いとはいえません。
一般病院
|
保険薬局
|
||
---|---|---|---|
医師 | 14,908,54 |
–
|
|
薬剤師 | 5,587,295 | 管理薬剤師 | 7,518,472 |
薬剤師 | 4,738,925 | ||
看護職員 | 5,072,054 |
–
|
|
事務職員 | 4,213,648 | 事務職員 | 2,607,107 |
実際には、病院ごとに薬剤師に任せる仕事内容がまちまちであるため、その違いまで考慮して妥当な条件かどうかを判断しましょう。
たとえば、夜勤があれば、その分の割り増しを出さなければいけないことは法律でも決まっているので、より高い年収を期待して良いことになります。
また、特に正社員・正規職員の場合は、病院のメリットとして、「福利厚生や各種手当など、給料以外の面が充実しているところが多い」も考慮しておきましょう。
たとえば、独立行政法人の病院、あるいは県立病院や市立病院などでは、正規職員の待遇や福利厚生は多くの場合、公務員と同等になっています。
社宅や寮、保養所などが充実していて格安で利用できたり、住宅手当・通院手当・扶養手当などのお金が出たりします。「給料という名目ではないが、実質的にそれらがプラスされる」と考えることができます。
民間病院も経営規模が大きいところほど、公立病院と近い傾向があります。
3.キャリア志向・家庭重視・年収重視で変わる正社員・派遣・パートの選び方
雇用形態には、正社員・派遣・パートなどがあります。それぞれに一長一短で、自分の望んでいる働き方次第で、なにがメリットでなにがデメリットになるかが変わってきます。
一例を挙げると、派遣社員の場合、以下のような制約があります。
- 原則的に医療機関(病院・診療所・クリニック)では禁止されているので、それら施設の求人はない
- ドラッグストア・薬局であっても、30日以内の期間の派遣が禁止されている
しっかりとそれぞれの特徴を把握した上で、求人を探すようにしましょう。
長期安定の働き方・正社員
「雇用期間を気にせずに働ける。退職金もしっかりと支払われる」「月給や年収が一見高くなくても、福利厚生の充実などでそれ以上のメリットがある」のが正社員の魅力です。
これは薬剤師が薬局・ドラッグストア・病院のどこで働くとしても変わりません。
「多様な正社員」に注意
ただ、厚生労働省も「多様な正社員」といった用語を使うぐらい、「正社員」の定義があいまいになってきています。中には、契約社員に近いものまで「正社員」と呼ばれることも増えました。
厚労省ではこれらとは区別して、「従来の正社員」「いわゆる正社員」を次のように定義もしています。
①労働契約の期間の定めがない
②所定労働時間がフルタイムである
③直接雇用である
①は「原則的には契約更新せずに60歳・65歳といった定年まで働くことができる」という意味です。
②はたとえば、「週5日勤務。1日8時間労働」といったペースが保たれていることをいいます。
③はごくシンプルにまとめてしまうと、「人材派遣(派遣社員、労働者派遣)ではない」という意味です。
契約社員とはこれら①〜③の条件が完全には満たされておらず、その内容を雇う側と雇われる側の間の契約で決めているものをいいます。
たとえば、「雇用期間は1年限定である。延長する場合は再契約が必要になる」といった「短期社員」もこの契約社員の一種ということになります。
「準社員」など様々な呼び方がありますが、そのほとんどは契約社員と同様です。
ですから、「従来の正社員」として働きたい人は、求人票などに「○○社員」や「○○正社員」どころか、単に「正社員」と書いてあっても、今後はそれだけで判断できないケースが出てくる可能性があります。「多様な正社員」である可能性も考えて、その内容をしっかりとチェックしてください。
【参考】
平成28年度厚生労働省委託事業 「多様な正社員の導入及び無期転換ルールへの対応に係る支援等事業」(厚生労働省)
薬剤師が正社員で働くメリット・デメリット
ほかの業界や職種でも同様ですが、正社員(従来の正社員)として働く場合、特にキャリア志向の人には次のようなメリットがあります。
- 60歳・65歳といった定年まで働けるので人生設計がやりやすい
- 人事評価も手厚い
- 昇給がある。また、経営規模の大きな雇用先ならばポストの種類も多く、役職の昇進の楽しみもある
また、昇給以外にも、金銭面や待遇の上でのメリットがあります。
- 賞与(ボーナス)・退職金・手当がフルに出る
- 福利厚生の利用も、派遣社員やパート・アルバイトのような制限を受けない
- 社会的信用が高く、クレジットカードや住宅ローンの審査にも通りやすい
半面、デメリットは次のようなものがその代表です。
- 責任が重い。残業や夜勤、休日出勤なども断りにくい傾向にある
- 休職・退職には調整が必要
- 勤め先の規模などにもよるが、転勤や配置転換がありえる
- 薬剤師として入社したはずが、事務などほかの職種に変わることまである
実は時給の高い派遣
時給換算で最も割りの良い働き方が派遣です。ただ、薬剤師など医療従事者の場合は、欠かせない注意点がいくつかあります。
派遣は間接雇用の一種
派遣について、まずは基本的なことから知っておきましょう。
正社員やパート・アルバイトは、直接雇用です。薬局やドラッグストアで働くのならば、あなたの雇用主はその薬局などを経営している人や会社です。
正社員ならば月給制、パート・アルバイトならば時給制で雇用主から直接支払われます。
一方、派遣の場合は、その間に人材派遣会社が入ります。あなた(派遣社員)を雇うのは、人材派遣会社です。
給料は時給制で、人材派遣会社から支払われます。つまり、職場になっている薬局やドラッグストアとは、雇用の面でも金銭の目でも直接のつながりはありません。
ただ、仕事上の指示はその職場の方から受けます。このような形態を「間接雇用」といいます。
職業紹介(就職あっせん)と混同している方もおられます。職業紹介の場合は、紹介会社とのつながりは就職・転職先が決まるまででしかありません。
人材派遣の場合は、途中で正社員やパート・アルバイトなどに切り替えない限り、人材派遣会社がずっとあなたの雇用主になります。
また、次のような人材派遣独自の制約があります。
(1)医療機関は原則的に禁止。
(2)同じ派遣先(同じ事業所)が派遣社員を受け入れていいのは最大でも3年。
(3)契約期間(働く期間)が30日未満のものは禁止。
(1)の「医療機関」とは、病院や診療所、クリニックなどです。つまり、薬局・ドラッグストアなどでしか派遣社員として働けません。ただし、「産休・育休・介護休などの人の代替要員」「医療過疎地」などいくつかの例外が設けられており、その場合は医療機関でも認められています。
また、(2)の期間の計算はあくまで派遣先単位です。仮に、あなたの前に2年間派遣社員の薬剤師がいたとしたら、あなたが働けるのは最大でも1年です。ただし、間が3カ月と1日あれば、この日数はリセットされます。
【参考】
労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・(厚生労働省)
労働者派遣『3年期間制限』早わかり(厚生労働省)
派遣で勤務するメリット・デメリット
職場と自分の間に人材派遣会社が入るため、「直接雇用であるパート・アルバイトよりも時給が安そう」と思われがちです。
しかし、実際には逆で正社員やパート・アルバイトに比べて時給が高くなっています。仕事内容として急募などどうしても集められない場合が多いことや人材派遣会社が強力に交渉するため、パートなどよりも3割程度高いのが一般的です。
また、この時給以外にも次のようなメリットがあります。
- 人材派遣会社に登録すれば、あとは担当者が派遣先を探してくれるので、時間と手間が掛けられない人にも利用しやすい
- 人材派遣会社が自分に代わって交渉してくれるので、曜日や時間帯などの勤務条件を通しやすい
- 臨時的なスタッフである分、責任が軽い。退職なども言い出しやすい
デメリットは次のようなものが代表的です。
- 最大でも同じ職場には3年しか働けない
- あくまで臨時的なスタッフの扱いなので、重要な仕事は任されにくく、やりがい不足になることがある。役職の昇進もない
- 職場の状況が変わったときに真っ先に切られる対象となるため、安定した勤務になりにくい
- 職場からの人事評価もないので、仕事ぶりが昇給などにつながらない
- 医療機関では原則的に働けない。そのほか、1カ月未満といった短期の働き方もできない
柔軟な働き方ができるパート・アルバイト
同じ臨時的な働き方でも、派遣は間接雇用である分、仕組みがやや複雑です。ざっとでも、「労働者派遣法」に目を通しておいた方がいいでしょう。こういったことが負担に思える人は、パート・アルバイトを中心に転職先・復帰先を探したほうがいいかもしれません。
給料は時給計算になり、安めなのが一般的です。しかし、あくまで同じく薬剤師の派遣と比べての話です。たとえパート・アルバイトであっても、薬剤師の資格を評価してもらっての雇用のため、ほかの職種よりも高給の傾向にあります。
「パート」と「アルバイト」って違うの?
女性が臨時的に働くときは「パート」、男性の場合は「アルバイト」と使い分けられることが少なくありませんが、法律上両者に違いがあるわけではありません。
「パート」とはもちろん「パートタイム」、あるいは「パートタイム労働者」の略で、反対語は「フルタイム」「フルタイム労働者」です。以前、主婦の多くが家計の足し程度に働くときは、勤務の曜日や時間帯を限っていたので、特に主婦の限定的な働き方を指すようになりました。
アルバイトは「本業がほかにあって、副業的にやる仕事」などの意味です。学生の場合は本業は勉強なので、ほぼ「アルバイト」が使われます。また、求職中の人が、間をつなぐ程度にやる仕事も、本業をほかに想定しているので「アルバイト」と呼ばれます。
ただ、薬剤師の求人の場合、仕事内容や雇用条件に違いがあるわけではありませんので、基本的には同じものとして考えていいでしょう。
かつては、パートやアルバイトの業務は「給料(時給)は安い代わりに、責任は軽く、仕事内容も補助的」なものが一般的でした。しかし、今は契約社員に近いものも少なくありません。
しっかりと求人内容をチェックし、「自分がイメージしているような仕事内容か」「仕事内容と時給が釣り合っているか」などを確認するようにしましょう。
薬剤師がパート・アルバイトで働くメリット・デメリット
薬剤師のパート・アルバイトのメリットも、ほかの業界・職種とも大きな違いはありません。
- 曜日や時間帯の希望が通りやすいので、子育て中・介護中の人でも働きやすい
- 原則的に残業はない。仮にあっても断りやすい
- 雇用主側も一定程度織り込み済みなので、退職しやすい
- 派遣とは異なり直接雇用なので、昇給などの交渉が比較的やりやすい
半面、デメリットは次のとおりです。
- 派遣同様に、臨時的なスタッフの扱いになる
- やりがいのある仕事は任されにくく、役職の昇進もない
- キャリアの形成にはつなげにくい
- 長期雇用は約束されていない
- 正社員・派遣と比べて年収・時給が低い
一段上の高給も可能になる「管理薬剤師」
先に挙げた「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告-令和元年実施」をもう一度チェックしてみましょう。薬局(調剤薬局・保険薬局)の一般的な薬剤師の年収は約474万円、管理薬剤師は約752万円です。
管理薬剤師の方が年齢も高く、経験も長いことは想像できるものの、実に約1.6倍もの開きがあります。
管理薬剤師とは、その名前の通り薬剤の管理責任者のことで、薬局や医薬品製造業の拠点ごとに必ず1人置かなければいけないことが、「医薬品医療機器等法」(薬機法、旧薬事法)で決められています。
薬局やドラッグストアでの管理薬剤師の主な仕事内容は次のとおりです。
- 薬剤師や従業員が業務を適切に行っているかどうかを監督する
- 医薬品の購入にも関与する
- 店舗内の医薬品などの品質管理をする
- 購入者に対し、医薬品を適正に使用するための服薬指導や情報提供をする
- 薬剤の副作用についてもアフターケアをし、副作用情報を収集して厚労省へ報告する
こうやってみるとわかるように、責任は重くなるものの、薬剤師の日常的な業務と大きな違いはありません。また、薬剤師以外の特別な資格が必要になるわけでもありません。
年収アップを考える人はこの管理薬剤師を目指すことが手段となりえます。同じ職場内での昇格を待つばかりが方法ではありません。
最初から管理薬剤師として募集しているところもあります。転職も視野にいれて検討してみましょう。
まとめ:薬剤師の仕事について
薬剤師の仕事は人々の健康維持や回復に直接的にかかわっています。それにやりがいを感じて続けている人も少なくないでしょう。専門的なのも大きな魅力です。
正社員、派遣、パート・アルバイトなど多様な働き方が用意されており、転職なども比較的容易なのも薬剤師の大きな特徴です。特に女性の場合、結婚・出産や家族の転勤でいったん職を離れ、復職が大きな課題になっていることが少なくありません。
しかし、この多様な働き方のおかげで、薬剤師の場合は復職へのハードルも低くなっています。また、男女問わず、転職によって年収アップに成功している薬剤師がいます。家庭などの事情が許すのならば、検討してみましょう。