徴用工も蒸し返す、韓国人の歴史観とは
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韓国の文在寅 大統領が、徴用工問題について従来の韓国政府とは違う見解を示した。慰安婦問題に続いて日韓間の新たな火種になりそうな気配である。日韓の摩擦はなぜ繰り返されるのか。韓国人の歴史に対する考え方について、新潟県立大学の浅羽祐樹教授に解説をお願いした。
少女像だけでなく徴用工像も
韓国では植民地支配からの解放を祝う8月15日の「光復節」を前に、ソウルのターミナルである龍山駅前の国有地などに徴用工像の設置が強行された。日本大使館前の慰安婦少女像のすぐ近くにも、後日、同じ像を設置すべく、公道に
くしくもこの夏は、ユネスコの世界遺産に登録された長崎県の端島で、第2次世界大戦末期に「意思に反して連れて来られ」「厳しい環境の下で」「働かされた」(カッコ内は世界遺産登録に際しての日本政府代表団の発言)朝鮮人たちが蜂起したという韓国映画「軍艦島」が公開され、650万人を超える観客を集めている。
文在寅大統領は、光復節演説とその2日後の就任100日の記者会見において、端島炭鉱を経営していた「三菱」の名を挙げた上で、「徴用工問題も慰安婦問題と同じように、日韓請求権協定によって個人請求権は放棄されていないというのが司法府の判例で、政府としてもそうした立場で臨んでいる」と断言した。
慰安婦問題では、韓国政府が「そうした立場」へと転じたにもかかわらず、日本政府に対して「外交上の経路」(日韓請求権協定第3条第1項)で問題提起しなかったことが、2011年8月、憲法裁判所によって「不作為」で違憲とされた。他方、徴用工問題では、韓国政府としても「請求権協定で解決済み」という立場を堅持していたところ、大法院(最高裁判所)が憲法裁判所と競うように、12年5月、「請求権協定で放棄された外交保護権と個人請求権は別」という判断を示した。
韓国政府は05年、個人請求権に関する法的立場を改め、慰安婦、被爆者、サハリン残留韓国人については、日韓請求権協定で個人請求権は放棄されていないとした。この時も徴用工の取り扱いが議論になったが、国交正常化交渉でむしろ日本側が個人補償を提案したところ韓国側が政府として一括して受け取ることを求めた経緯もあり、あえて別扱いにした。文氏は弁護士だった頃に徴用工裁判に原告側代理人としてかかわったことがあるが、05年の見直しには当時の政府高官として責任を負っている。
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