スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

中国の人権活動家の例

2008-04-28 04:38:21 | コラム
スウェーデンのラインフェルト首相が今月中旬に訪中したことは、以前書いた。中国主席との会談の席で、スウェーデン首相は13人の人権活動家の釈放を要求したことにも触れた。この13人の中には、アムネスティー・インターナショナルが事前に首相に提出したリストに挙げられていた4人の人権活動家も含まれていた。

その4人とは、Hu Jia、Ye Guozho、Chen Guangcheng、Yang Chunlinだったが、このうち最後の人は「楊春林」氏のことのようだ。朝日新聞は彼が不当に逮捕され、不当な裁判の下、5年にわたる懲役の判決を受けたことを伝えている。

<朝日新聞より>
「五輪の囚人」中国活動家、人権訴え「国家転覆扇動罪」

中国では、これと同様の逮捕・拘束・懲役判決が数多く起きているようだ。しかし、チベットの件もそうだが、国の統制を受けた国内メディアのもと、中国の一般の人々はこのような重大な事態が自国で起きていることをどこまで知っているのだろうか? うすうす気付いてはいても「長いものに巻かれている限り、自分は大丈夫」とまるで他人事のように考えられているような印象を、ここ数日にわたって中国内外で起きている中国人のデモ行動を伝える報道を読むたびに思う。

土曜日にはストックホルムの王宮前でも、在スウェーデンの中国人や留学生が、中国の立場を擁護すべくデモを行った。「欧米は中国の実情を知らず、チベットにばかり加担している」「中国ばかりを批判するのは不当だ」などのスローガンが叫ばれたという。

写真の出展:Dagens Nyheter

上に掲載した朝日新聞の記事は、記事全体がかなり衝撃的だと思うが、中でも

「弁護士らによると、楊氏は拘置所で何日間もベッドに手足を鎖で縛りつけられたまま食事や排泄(はいせつ)を強いられた。 」

といった箇所は、警察や行政が一般の人々を不当に逮捕した上に、公権力を用いて嫌がらせとしか思えない行為を平気で行っている状況を象徴的に物語っている。

オリンピックを是が非でも政治的な大成功に導きたい中国は、自国の光の面ばかりを対外的に見せ付けようとする。しかし、このような記事を読むたびに、今年のオリンピックに対する興(きょう)はますます冷めていく気がする。それに、自国の問題から人々の目を逸らし、国民を団結させるための一つの手段として、共産党政権が「ナショナリズム」や「愛国心」を積極的に活用・推進している点が非常に気掛かりだ。

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Chinese Human Rights Defenders