では、失業対策のためにスウェーデンではどのような政策が考えられているのだろうか?
まず (a) 失業者自身の能力を高めること。現在の初任給の水準において、なかなか雇ってもらえない若者がいるとすれば、じゃあ、その若者の能力を高めることで限界生産性を向上させ、その給与水準を上回るレベルに持っていってやればよい、という考えだと説明できるであろう。そのため、90年代以降は大学教育の拡大や、高校教育の再チャレンジ、高卒後の労働市場訓練に力をいれ、彼らのエンプロイアビリティー(employability:就業能力)を高める政策が採られてきた。
それから、(b) 試用雇用の期間を設けたり、期限付きの雇用形態を取り入れることで、雇用者が若年者を雇いやすくする制度も導入されている。若年者もこの雇用の間に、経験や職歴を積んだり、人的ネットワークを広げることで、その後の求職活動に生かすことができるし、その職場で認められれば、その後、正規の従業員として雇ってもらえる可能性もある。ちなみに、雇う側はこの制度を繰り返し使うことはできない。
これらの政策がどこまで効果を発揮したのかを計るのは難しいが、大学教育の中でも職業技能養成の性格が強い教育を受けた大学生や労働市場訓練を受けた一部の人たちの就職率はいいという。一方で、若年者の失業率が高いのは実際の職業経験が少ないことが主な原因であるから、教育によっていくら能力を高めたところで企業がどこまで雇おうとするのか、疑問の声もある。他方で、試用雇用や期限付き雇用などの制度は、これらの雇用形態を足がかりにしながら、最終的に正規雇用にたどり着くルートが定着しつつあるようなので、それなりに効果を発揮しているようだ。若年者(25歳以下)の失業率が高いとはいえ、このような形で25-30歳になるまでには多くの人がそれなりに労働市場で自らを確立させているのだと思う。
それから、今後実施される予定の政策として、(c) 若年者を雇った場合、企業負担の社会保険料(pay-roll tax)を半額にする、というものがある。通常、企業は従業員に支払う給与の額の約32%を給与とは別に国に納めることになっている。つまり、企業にかかる従業員の金銭的コストは、給与だけでなくこの部分も合わせたものなのだ。この社会保険料(pay-rolle tax)のうち半分を免除することで、若年者の労働コストを下げ、企業が雇いやすくしようとする政策だ。
ただ、社会保険料の半分免除、とはいえ、免除された部分は国庫から補填される。つまり、若年者の健康保険や年金保険料はちゃんと支払われる、ということ。だから、企業にとっての労働コストを下げたことで、雇われる側にしわ寄せが来ることはない。
と、スウェーデンはこのような形で失業対策を行っているのである。
特に(3)の企業にとっての労働コストは下げるが、それは賃金の切り下げによってではなく、また、雇い主の社会保険料免除によって、そのしわ寄せを雇われる側に押し付けることはしない、という点は大変面白いと思うがどうだろう?
まず (a) 失業者自身の能力を高めること。現在の初任給の水準において、なかなか雇ってもらえない若者がいるとすれば、じゃあ、その若者の能力を高めることで限界生産性を向上させ、その給与水準を上回るレベルに持っていってやればよい、という考えだと説明できるであろう。そのため、90年代以降は大学教育の拡大や、高校教育の再チャレンジ、高卒後の労働市場訓練に力をいれ、彼らのエンプロイアビリティー(employability:就業能力)を高める政策が採られてきた。
それから、(b) 試用雇用の期間を設けたり、期限付きの雇用形態を取り入れることで、雇用者が若年者を雇いやすくする制度も導入されている。若年者もこの雇用の間に、経験や職歴を積んだり、人的ネットワークを広げることで、その後の求職活動に生かすことができるし、その職場で認められれば、その後、正規の従業員として雇ってもらえる可能性もある。ちなみに、雇う側はこの制度を繰り返し使うことはできない。
これらの政策がどこまで効果を発揮したのかを計るのは難しいが、大学教育の中でも職業技能養成の性格が強い教育を受けた大学生や労働市場訓練を受けた一部の人たちの就職率はいいという。一方で、若年者の失業率が高いのは実際の職業経験が少ないことが主な原因であるから、教育によっていくら能力を高めたところで企業がどこまで雇おうとするのか、疑問の声もある。他方で、試用雇用や期限付き雇用などの制度は、これらの雇用形態を足がかりにしながら、最終的に正規雇用にたどり着くルートが定着しつつあるようなので、それなりに効果を発揮しているようだ。若年者(25歳以下)の失業率が高いとはいえ、このような形で25-30歳になるまでには多くの人がそれなりに労働市場で自らを確立させているのだと思う。
それから、今後実施される予定の政策として、(c) 若年者を雇った場合、企業負担の社会保険料(pay-roll tax)を半額にする、というものがある。通常、企業は従業員に支払う給与の額の約32%を給与とは別に国に納めることになっている。つまり、企業にかかる従業員の金銭的コストは、給与だけでなくこの部分も合わせたものなのだ。この社会保険料(pay-rolle tax)のうち半分を免除することで、若年者の労働コストを下げ、企業が雇いやすくしようとする政策だ。
ただ、社会保険料の半分免除、とはいえ、免除された部分は国庫から補填される。つまり、若年者の健康保険や年金保険料はちゃんと支払われる、ということ。だから、企業にとっての労働コストを下げたことで、雇われる側にしわ寄せが来ることはない。
と、スウェーデンはこのような形で失業対策を行っているのである。
特に(3)の企業にとっての労働コストは下げるが、それは賃金の切り下げによってではなく、また、雇い主の社会保険料免除によって、そのしわ寄せを雇われる側に押し付けることはしない、という点は大変面白いと思うがどうだろう?