(太字強調は筆者による)
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。
電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
[児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律 第7条第6項]
児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
これらの表現はたとえ大人相手にしか売っていなくても有罪になる。
児童ポルノの方は基準がおおむね明確である(もちろん過激な水着などボーダーライン上のものはある)。
では刑法的な『わいせつな文章、図画』の基準はどこにあるかというと、現在の基準は『無修正の性器』である。だから、大人しか見ない(ことになっている)アダルトビデオやエロマンガであっても日本では性器にはモザイクをかけねばならない。肛門はセーフである(はず。少なくとも2021年に発売されたアダルトビデオで無修正の肛門が映っている作品は複数確認している)。もちろん『修正が甘い』と判断されると違法になることはあり、以前薄消しが流行ってビデ倫の関係者が逮捕されたことがあるし、逆に『モザイク破壊』ものを制作した人も逮捕されたはずだ。
余談だが、AVで女性器内を内視鏡で見るシーンなどではある程度中に進むとモザイクが外れているのでどうやら基準は外性器らしい。
古典芸術(ダビデ像など)も例外であると考えられるが、ここでは一旦その是非は置いておく。
実は『18禁』に関する唯一の法的根拠はここにある。だが仕組みは分かりづらい。
条例そのものは多数の都道府県にあるが、東京都の条例を取り上げる理由は後述する。
この条例は『青少年に見せるには有害』であるコンテンツについて規定している。『大人が見ても有害』は想定していない。
そしてこの条例では『表示図書類』についての定めがある。いわゆる『18禁』である。
第七条 図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条の興行場をいう。以下同じ。)を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない。
一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの
第九条の二 図書類の発行を業とする者(以下「図書類発行業者」という。)は、図書類の発行、販売若しくは貸付けを業とする者により構成する団体で倫理綱領等により自主規制を行うもの(以下「自主規制団体」という。)又は自らが、次の各号に掲げる基準に照らし、それぞれ当該各号に定める内容に該当すると認める図書類に、青少年が閲覧し、又は観覧することが適当でない旨の表示をするように努めなければならない。
『18禁』をつけているのは誰かというと、基本的には出版社等の発行者自らもしくは自主規制団体がつけている。そのようなコンテンツは青少年に見せないようにする旨が書かれている。
それに対し、「出版社は18禁扱いしていないけれどこれは18禁にするべきだろ」というコンテンツは出てくる。そのようなコンテンツがいわゆる『有害指定』を受ける。
第八条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。
一 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
そして重要な点として。東京都で有害指定を受けた書籍は、取次が扱わなくなるため“事実上”販売できなくなる。
ではその『一般指定』と『18禁』を分ける基準であるが、実のところ『器具の使用や人格否定などの表現(星崎レオ氏のtweetより)』はそれほど重視されていないと考える(出版社が受けている指導として編集者経由でそのように聞いたのかもしれないが…)。
増田が審議会の議事録を読んだ限りで言うなら、主なポイントは『性行為描写』ではなく『性器描写』である。
(というか、これは増田の個人的意見であるが『性行為描写』を基準にする方がアホらしいと思う。まさか『男性器を女性器に挿入する行為』だけをアウトにして他は野放しにもできないだろうが、『では何を広義の性的行為としてアウトにして何をセーフとするか』に基準が作れるとは思えない)
性器が無修正だとそもそも刑法175条違反というのは先述したが、『性器+モザイクなどの修正』だと基本は18禁になる。そこで『白抜きだけれど性器の輪郭ははっきりしているか、いわゆる“謎の光”で周辺含めて飛ばしているか』といったことが議事録には書かれている。(それがバカらしい、という点は増田も同意する)
その点で言うなら、星崎レオ氏に関しては有害指定された該当書籍は分からないが、、それ以前の単行本では『男性器の輪郭が分かる白抜き』が使われており、正直かなりボーダーライン上ではある。
もっとも、女性に関しては「そもそも股間に何も描かない」という手が使いやすいのに対して男性でその手は使いづらい、というのはあるだろう。
だが一方で、男性器と女性器は平等に扱うべきであり、男性の肛門と女性の肛門も平等に扱うべきだとも思う。胸は平等ではないと思うが。