2013年3月20日、桜が咲き始めた頃、東京大学駒場キャンパスにおいて、パリ第8大学教授ブリュノ・クレマン氏の講演会「哲学者は作家か?」が開催された。この講演は関東学院大学准教授の郷原佳以氏が企画立案し、日本学術振興会の外国人招聘研究者事業(短期)の支援により行われた。全5回講演で、この日はその最終日であった。 パリ第8大学の授業風にと提案された講演会は、司会者の小林康夫先生によるクレマン氏に対するある問いかけから始まった。「哲学者は作家か?」というタイトルに因んで立てられた「クレマン氏にとっての哲学者とは誰か」という問いに、「ポール・リクールとジャック・デリダ」と答えたクレマン氏は、90年代終わりにおけるこの二人との思い出を語ってくれた。この日参加した聴衆は氏と二人の偉大な哲学者との厚い信頼関係を伺うことができたのだった。 さて、本題において、まずクレマン氏は「哲学者は作家か?」という自