キャンセルカルチャーという言葉がある。欧米でこの10年くらいの間に広まった現象だ。ある人物の考えを問題視して、その人が発言する機会や著作を発表する場そのものを奪う運動を指す。欧米だけではなく、日本でも広まってきている。 最近では、KADOKAWAから『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』(アビゲイル・シュライアー著、岩波明監訳)の刊行中止事件は、このキャンセルカルチャーを考えるいい機会だった。 思春期の子供たちが性転換し、その希望を持つ人たちが激増している状況を批判的な観点から検証した本だ。内容にはもちろん賛否あるだろう。ただ原著自体は米国でも多くの人が読み、また読者の評価も高い。10カ国語ですでに翻訳もされている。だが、日本では「トランスジェンダーの安全や人権を脅かしかねない」という批判や、出版社の前での抗議活動が予告されるなど、ネットを中心に反対の声