非ユークリッド空間と遠近法 (1) 1.遠近法の謎 昔、「バニシング・ポイント」という映画があった。 内容は省くが、アメリカの荒野に真っ直ぐ伸びるハイウェイが舞台で、その地平線の向こうに点となって消えていく風景が、タイトル「消失点(バニシング・ポイント)」の由来になっていた。同時に、主人公が死に向かって突っ走っていく姿を暗示するものでもあった。 画家諸君が画面で利用している「線遠近法」は、この水平線上の一点から直線を引くことで奥行きを作り出す方法であることは知っている。いわゆるパースペクティヴ(透視図法)というヤツだ。 では、その原理から言えば、このハイウェイの真ん中に立って見ると、地平線の一点から広がってくる道路は、私の後方ではさらに広がっていくはずだが・・・ そんなことはなく、後ろを振り返れば、まただんだん細くなっていくだけである。 「そんなのは当たり前、後ろもパースペクテ