ヘビとカエルの攻防 捕食者と被食者は、共進化の過程でさまざまな戦術を発展させてきたと考えられています。両者の駆け引きに関する研究はこれまで数多くなされており、また、どのような行動が捕食や捕食回避に適しているのかを評価する理論的研究も進んでいます。しかしながら、戦術と呼ばれるものが実際どのように機能しているのかについて実証的な知見は十分に得られていませんでした。 捕食回避における従来の一般的な認識のひとつに、捕食者に近づかれないうちに逃げた方が逃げ切りやすいというものがありました。しかしながら、この認識のもとでは説明のつかない行動をとる動物もいます。「ヘビににらまれたカエル」という言葉があるように、カエルの多くは、天敵であるヘビに直面するとまず静止します。そして、ヘビに至近距離まで近づかれてから逃げ始めます。 この行動は、捕食者の接近を許すという点で専ら生残性を低めるものとして考えられてきま