午後11時を過ぎると、ケータイメールの着信音が短く、何度も鳴る。画面に並ぶのは、ユーモラスな象やおにぎりの絵文字――。 それは、親に悟られないための暗号だった。象は「教祖」の意味、おにぎりは「御言葉(みことば)」、太陽は「神様」。メールは、カルト教団の教えを伝えるものだ。 「まるでケータイに縛られているようだった」。現在は西日本の大学に通うミカ(19)はこう振り返る。 2007年、高校2年の夏だった。放課後、友人の待つドーナツ店に向かう途中、大学生風の女性に声をかけられた。「学校の体育館は、外部のバレーボールサークルも利用できますか」 むげに断るのも申し訳ない。「調べて連絡しますよ」。何のためらいもなく、メールアドレスを教えた。赤外線通信機能を使えば、互いのケータイを近づけるだけで一瞬で交換できる。 〈サークルに入ってみない?〉と誘いのメールを受け取ったのは2日後。何度も断ったが、メールは