理化学研究所などの研究チームが、ゴキブリの「サイボーグ化」に成功した。極薄の太陽電池を開発し、無線通信装置と背負わせることで、指示した方向に曲がらせられることを実験で確かめた。小型カメラや温度センサ…
あきらめなかった研究 みんな心を動かされた 基礎研究こそ大きな力 「私は中学3年から今まで、金属球の転がり摩擦という基礎物理分野の実験を続けております」。大手ゼネコンの竹中工務店の社長あてに手紙を書いた高校生がいます。全国の高校生・高専生による科学技術のコンテストで竹中工務店賞を受賞し、お礼を伝えるためでした。書いた手紙がもたらした思わぬ展開を取材しました。 あきらめなかった研究 手紙を書いたのは、東京都町田市の玉川学園高等部3年の浅倉ゆいさん(17)。浅倉さんは昨年12月にあった第18回高校生・高専生科学技術チャレンジ「JSEC2020」(朝日新聞社、テレビ朝日主催)で、竹中工務店賞を受賞しました。 テーマは「レールの上を転がる球の摩擦力の研究」です。物理の教科書には摩擦係数は速度に依存しないとあるのに、実際に球を転がして計測すると速度で摩擦係数が変化してしまうのはなぜか。その原因を探ろ
米Alphabet傘下の英DeepMindが、遺伝子配列情報からタンパク質の立体構造を解析するAI「AlphaFold v2.0」(以下、AlphaFold2)をGitHub上で無償公開し、ネット上で注目を集めている。Twitterを利用する生物系の研究者からは「革命的な成果だ」「これからの研究の前提が変わっていく」など、AlphaFold2の予測精度に対して驚きの声が相次いだ。 なぜAlphaFold2はこれほどの驚きや賞賛をもって迎えられているのか。タンパク質構造解析の難しさをひも解く。 未知の部分が多いタンパク質の構造 タンパク質は数十種類のアミノ酸からできており、配列によってさまざまな性質に変化する。例えば筋肉、消化酵素、髪の毛はそれぞれ役割が異なるが、いずれもタンパク質で作られている。タンパク質の構造が分かれば、生体内の化学反応の理解が進む。アルツハイマー型認知症やパーキンソン病
青色LEDの開発に成功し7年前にノーベル物理学賞を受賞した名城大学終身教授の赤崎勇さんが1日、亡くなりました。92歳でした。 赤崎さんは現在の鹿児島県南九州市の出身で京都大学を卒業後、当時の松下電器の研究所を経て昭和56年に名古屋大学の教授になり、名古屋市にある名城大学の終身教授を務めていました。 赤崎さんは当初はほとんど見向きもされていなかった窒化ガリウムに注目し、青い光を出すのに必要な高品質の結晶を昭和60年ごろに作り出し、20世紀中は無理といわれた青色LEDの開発に初めて成功しました。 この成果によって赤・緑・青の光の3原色のLEDがすべてそろい、フルカラーのディスプレイなどさまざまな分野でLEDの実用化の可能性を広げました。 また、波長の短い青い色を出す技術はDVDなどの記憶容量を大幅に増やすことができるブルーレイディスクの開発にもつながり、大量の情報をやり取りする現代社会において
ことしのノーベル化学賞に、生物の遺伝情報を自在に書き換えることができる「ゲノム編集」の新たな手法を開発したドイツの研究機関とアメリカの大学の研究者2人が選ばれました。 受賞が決まったのは、フランス出身でドイツのマックス・プランク感染生物学研究所のエマニュエル・シャルパンティエ所長と、アメリカ出身でカリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授の2人です。 2人は「細菌」の免疫の仕組みを利用して、ゲノムと呼ばれる生物の遺伝情報の狙った部分を極めて正確に切断したり、切断したところに別の遺伝情報を組み入れたりすることができる、「CRISPR-Cas9」(クリスパー・キャスナイン)と呼ばれる「ゲノム編集」の画期的な手法を開発したことが評価されました。 「CRISPR-Cas9」は、それまであった「ゲノム編集」の方法に比べて簡単で効率がよく、より自在に遺伝情報を書き換えることができること
タモリさんと山中伸弥さんが司会を務めたNHKスペシャル「シリーズ人体Ⅱ遺伝子」は、今年高視聴率を獲得した番組として話題になった。背景にあるのは、現在急速に進む「遺伝子」研究への期待と不安――。技術は日々進化し、テレビで遺伝子検査のCMが流れる時代にあって、ゲノム編集で人体が「改造」されるのもそう遠くないのではないかと考える人もいるだろう。 今回、そんな『シリーズ人体 遺伝子』書籍化のタイミングで、特別対談が企画された。生命科学研究のトップリーダー山中伸弥さんと浅井健博さん(NHKスペシャル「シリーズ人体」制作統括)が、いまなぜ生命倫理が必要か――その最前線の「現実」を語り明かした。 山中さんの踏み込んだ発言 「人類は滅ぶ可能性がある」――これは収録中、司会の山中伸弥さんがつぶやいた言葉である。 私たち取材班は、番組を通じて、生命科学の最前線の知見をお伝えした。どちらかといえば、その内容は明
「スマホ(モバイル)顕微鏡」をご存じだろうか。スマートフォンのカメラの上にレンズ付きの小さな器具をおくだけで、スマホが顕微鏡に早変わり。器具の改良とスマホの性能向上で、おもちゃの域を脱し、今や科学研究にも使われる。開発に携わってきた合同会社、Life is small.(LISCO=リスコ、横浜市)の白根純人さん、永山国昭さんにモバイル顕微鏡の進化を聞いた。「偏光顕微鏡、蛍光顕微鏡など普通の光
政府は12日、科学技術について日本の基盤的な力が急激に弱まってきているとする、2018年版の科学技術白書を閣議決定した。引用数が多く影響力の大きい学術論文数の減少などを指摘している。 白書によると、日本の研究者による論文数は、04年の6万8千本をピークに減り、15年は6万2千本になった。主要国で減少しているのは日本だけだという。同期間に中国は約5倍に増えて24万7千本に、米国も23%増の27万2千本になった。 また、研究の影響力を示す論文の引用回数で見ると、上位1割に入る論文数で、日本は03~05年の5・5%(世界4位)から、13~15年は3・1%(9位)に下がった。 海外の研究者と共同で書いた論文ほど注目を集めやすいが、日本の研究者は海外との交流が減っている。00年度に海外に派遣された研究者の数は7674人だったが、15年度は4415人に。海外から受け入れた研究者の数も、00年度以降は1
東京大学の研究チームが、強力な電磁石を組み込んだ実験装置を使って、世界最高となる985テスラの磁場を発生させることに成功した。テスラは磁場(磁力)の強さを示す単位で、同チームが過去に達成した730テスラの記録を大幅に更新した。強力な磁場は、超伝導や磁石の新たな材料探しなど様々な研究に役立つという。 30日付の米科学誌電子版に発表した。東京大物性研究所の嶽山(たけやま)正二郎教授(物性物理)によると、「電磁濃縮法」と呼ばれる方法を使った。鉄と銅でできた特殊なコイルに、約4千キロワットに相当する電気を約1万分の1秒流し、一瞬だけ強力な磁場を発生させた。ダイナマイト数本分に相当する爆発が起きるため、実験は鉄製の壁で囲まれた防護箱内で行ったという。 病院の検査などで使うMRI(磁気共鳴断層撮影)装置が発生する磁場は3テスラほどという。(小堀龍之)
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫、以下 NTT)は、トランジスタ※1内でランダムな方向に動く電子(熱ノイズ)を観測し、一方向に動く電子のみを選り分けることで電流を流し、電力を発生することに成功しました。これは、熱力学分野で長年パラドックスとして議論されていたマクスウェルの悪魔※2の原理を利用することで実現したものです。 熱ノイズは無秩序な電子の動きであり、電子の動きを平均化すると、どの方向にも動いていません。一方、電流は一定の方向への電子の流れです。通常、外部電源などを用いず、無秩序な熱ノイズから、電流という秩序性を持った動きを生み出すことは不可能です。しかし、もし個々の電子の動きを観測し一定の方向に動く電子のみ選び出すことができれば、電流を生成することができるはずです。この、電子を選び出す作業をするのが「マクスウェルの悪魔」と呼ばれるもので、150年以
てんとう虫が飛ぶときに使う「後ろばね」と呼ばれる薄いはねが固いはねの下で折り畳まれる様子を解明することに、東京大学の研究者らが初めて成功し、研究グループは、開閉や伸縮が必要な工業製品などへの応用につながる成果だとしています。 その結果、ナナホシテントウは、飛ぶときに使った後ろばねを、さやばねと腹部を動かして体の形に合わせて大きく2か所で折り畳み、およそ3分の1の大きさにしていることがわかったということです。 さらに、微細な構造を調べる「マイクロCTスキャナー」を使って後ろばねの構造を調べたところ、はねの縁には2本のテープ状のバネのような構造が見られ、これが一気に伸びることで、はねがスムーズに広がっていることがわかりました。 昆虫のはねは、単純な構造にもかかわらず、小さく折り畳まれた状態から一瞬で大きく広げられることから、開閉や伸縮が必要な工業製品などへの折り畳み方の応用が期待されています。
アルミニウムの薄膜に微細な凹凸をつけ、カラーの色彩を表示することに理化学研究所のチームが成功した。色が半永久的に劣化せず、光学機器の部品などに応用が期待できるという。英科学誌に発表した。 光が物質に当たると特定の波長が吸収され、残りの波長は反射して人間の目に色として映る。チームはアルミニウムの表面に光の波長より小さいナノメートル(ナノは10億分の1)サイズの凹凸をつけ、吸収される波長を制御して色を作り出す方法に着目した。 基板の上に樹脂製の微細な四角形を並べ、アルミニウムの薄膜で覆った。四角形の大きさなどを変えると吸収する光の波長が変わり、人間が見える多くの色を表示できた。大きさが違う四角形を組み合わせると色が混ざり、黒も表現できる。 インクやペンキは強い光や高温、酸化によって徐々に退色するが、この方法は変化しにくく、軽くて薄いのも利点。大型望遠鏡の材料などに応用が期待できるという。 田中
物質のもとになる分子を組み合わせてできた、大きさが100万分の1ミリという分子の車による世界でも初めてのレースが、今月下旬にフランスで開かれることになり、日本からも物質・材料研究機構のチームが出場することになりました。 この分子機械の研究や開発を促そうと、分子の車による世界でも初めてのレースが今月28日と29日に、フランス南部のトゥールーズで開かれることになり、日本からは茨城県つくば市にある物質・材料研究機構のチームが出場することになりました。 日本チームの分子の車は、大きさが100万分の1ミリから100万分の2ミリほどで、炭素と水素と酸素の原子が合わせて88個つながって、草履のような形をしています。電気を流すと、草履のような形の外側の部分が人の手足のようにバタバタと動いて、前に進むということです。 フランスで開かれる分子の車のレースは金の板の上で行われ、板の表面にある微細な溝を利用して設
ナノカーレースを開催するフランス国立科学研究センター(CNRS)の研究室(2017年4月4日撮影)。(c)AFP/CNR/Hubert RAGUET 【4月7日 AFP】化学者や物理学者が操縦する極小分子自動車(ナノカー)が、フランスで今月行われる世界初のナノカーレースに集まる。ただし、裸眼で見物することは全くできないだろう。 主催者側の4日の発表によると、米国、フランス、ドイツ、日本、スイス、米オーストリア合同チームがそれぞれ資格を得たが、4月28日と29日のレースに参加するのは4チームだけだ。 フランス国立科学研究センター(CNRS)の後援により、同国南西部トゥールーズ(Toulouse)にあるCNRSの実験室で開催されるレースは、ユーチューブ(YouTube)でストリーミング中継される。 極小カーのエンジン、ハンドル、ペダルは、それぞれ数百個の原子を組み立ててできている。科学者らがハ
「誰も目にしたことがないものをふろくにつけたい」。毎号、開発者のこだわりがMakerの興味を引きつけるふろく付き雑誌「大人の科学マガジン」(学研プラス)。1年の沈黙を破り、久々の新製品を12月20日にリリースする。ふろくは1枚つばさでカエデの種のように回転しながら飛行する「カエデドローン」。通常、企画から発売までは長くても1年程度だが、今回は2年もの時間を要したという。裏では数々の困難に立ち向かう開発者の苦闘があった。難問を克服する新しいアイデアはどう生まれ、どう具体化されたのか?(撮影:加藤甫) 自然界に学ぶ飛行の原理 大人の科学マガジンふろく開発スタッフの小美濃芳喜氏は飛翔体のエキスパートだ。学生時代には人力飛行機の開発に関わり、当時の世界記録更新に貢献した。 そんな小美濃氏が長年温めていたアイデアがカエデの種をもとにした飛翔体の開発。挑戦した人は過去にもいたが、商品化にこぎ着けた例は
【ポイント】 人工光合成の実現には、水を分解して酸素を発生する反応効率を高める必要がある。 植物の光合成にヒントを得て、高効率で酸素を発生する鉄の触媒分子の開発に成功した。 人工光合成技術の実現に向けた大きな一歩で、エネルギーや環境問題の解決に貢献する。 JST 戦略的創造研究推進事業の一環として、自然科学研究機構 分子科学研究所(総合研究大学院大学 構造分子科学専攻)の正岡 重行 准教授、近藤 美欧 助教、総合研究大学院大学の岡村 将也 博士課程大学院生らの研究グループは、植物の光合成よりも高い効率で水から酸素を発生する鉄錯体注1)(酸素発生触媒)の開発に成功しました。 持続可能なエネルギー循環システムの構築に向けて、太陽光のエネルギーを貯蔵可能な化学エネルギーへと変換する人工光合成注2)技術が高い関心を集めています。実現の障害となっていたのは、水の分解による酸素発生反応注3)の効率の低
【AFP=時事】バナナの皮の黒い点が、皮膚がんの早期発見に役立つかもしれない──。8日の独科学誌「応用化学(Angewandte Chemie)」に掲載された研究論文によると、バナナの皮を活用することによって、皮膚がんのより簡単な診断が可能となり、患者の生存率上昇も期待できるという。 イグ・ノーベル賞、バナナの皮を使った研究で日本人も受賞 熟したバナナの皮には、丸くて小さな黒点が現れる。これはチロシナーゼとして知られる酵素の働きによるもので、この酵素は人間の皮膚にもある。皮膚がんの中でも致死率の高い悪性黒色腫(メラノーマ)に苦しむ人には大量に存在する。 スイスの物理・分析電気学研究所(Laboratory of Physical and Analytical Electrochemistry)の科学者チームは、こうした共通性を活用してがん用のスキャナーを製作。人間の皮膚での応用の前に、
植物の葉や根、茎、花などを丸ごと透明化し、解剖することなく内部を細胞レベルで観察できる新技術を開発したと、名古屋大学が10月28日に発表した。植物の3次元構造を維持したまま観察できるなどメリットは大きく、「世界中で植物科学研究が加速していくことが期待される」としている。 理化学研究所が開発した透明化解析技術「CUBIC」で用いた方法を植物に応用。植物を蛍光たんぱく質を使った観察の際に邪魔になるクロロフィル(葉緑素)を除去する最適な化合物の組み合わせを探し、植物を透明化する試薬「ClearSee」の開発に成功した。 生体組織の内部構造を観察するためには「2光子励起顕微鏡」という高価な顕微鏡を使う必要があったが、蛍光たんぱく質で標識した組織を透明化した場合、一般的に普及している「共焦点顕微鏡」でも観察できるという。透明化した組織の細胞壁と細胞核を後から蛍光色素で染色することもでき、蛍光たんぱく
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く