静岡大学農学部の河岸洋和特別栄誉教授は、2004 年に発生したスギヒラタケ急性脳症を長年にわたり研究し、化学的に解明しました。 その18年間に及ぶ一連の研究成果は、2023年7月31日に、日本学士院の発行する国際雑誌「Proceedings of the Japan Academy, Ser. B, Physicaland Biological」に掲載され、表紙を飾りました。 【研究のポイント】 ・スギヒラタケは、東北、北陸、中部地方を中心に広く食されていた美味なキノコ ・ところが、2004 年秋に、このキノコの摂取により、急性脳症が発生(死亡例17) ・この事件は戦後最悪の食中毒事件 ・その後厚生労働省は研究班を組織したが「原因不明」と結論 ・研究班の班員であった河岸は、その後も研究を継続 ・このキノコから、タンパク質であるpleurocybelline(PC)とPleurocybell
【▲ 図1: マーチソン隕石をはじめとした炭素質コンドライトの隕石には、アミノ酸のような比較的分子量の大きな有機物が含まれることが分かっていますが、その成因の詳細は分かっていませんでした。 (Image Credit: United States Department of Energy / Public Domain) 】太陽系の初期に形成され、その後ほとんど変質しなかったと考えられている「炭素質コンドライト」の隕石には、アミノ酸など比較的分子量の大きな有機物が含まれていることがわかっています。 炭素質コンドライトの起源と見られる天体は、たとえば宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」の探査天体である小惑星リュウグウや、アメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「オサイリス・レックス」(OSIRIS-REx、オシリス・レックスとも)の探査天体である小惑星ベンヌが候補
プレスリリース 研究 2022 2022.05.13 水を超高速で通すにもかかわらず塩を通さないフッ素ナノチューブを開発 —次世代超高効率水処理膜の実現に向けて— 1.発表者: 伊藤 喜光(東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 准教授/JST さきがけ研究員) 佐藤 浩平(研究当時:東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 博士課程学生、現所属:東京工業大学 生命理工学院 助教) 相田 卓三(理化学研究所 創発物性科学研究センター 副センター長/東京大学卓越教授(国際高等研究所東京カレッジ)) 2.発表のポイント: ◆内壁がテフロン(注1)表面のようにフッ素で密に覆われたナノチューブを超分子重合(注2)で開発した。 ◆このナノチューブは塩を通さないが、これまでの目標であったアクアポリン(注3)の4500倍の速度で水を通した。 ◆海水を高速で真水に変える次世代水処理膜の開発に
2015年3月17日 公益社団法人日本化学会(榊原定征会長)は,教育現場である高等学校の化学で改善が求められ,しかも疑義を感じる用語について最も適切と思える姿を検討し,今回の提案をまとめましたので,ご報告申し上げます。 ・化学用語に関する意見募集-集計結果 ・高校化学に関する意見募集-集計結果 【概要】 教育・普及部門学校教育委員会に化学用語検討小委員会(委員長・渡辺 正 東京理科大学教授)を設置し,学校教育現場で問題となっている化学用語15語(高等学校『化学基礎』に収載の語)に関し,「現状」「提案」「理由・背景」を記した「高等学校化学で用いる用語に関する提案(1)」をまとめました。 今後,高等学校化学教科書を刊行している教科書会社各社に反映していただけるよう協力を求めるとともに,弊会機関誌『化学と工業』誌,『化学と教育』誌,ホームページなどに載せて周知を図る所存です。 メディア各社におか
アルカリ金属を水に入れると派手に爆発する。化学の授業でおなじみのこの実験の反応機構が、実は長く誤解されてきたことが、ハイスピードカメラを使った研究で判明した。 ナトリウム‐カリウム合金の液滴が水中に落下する様子。左側は水面を斜め上から、右側は水面を斜め下から捉えた画像。金属液滴が水面に触れた直後、超高速でスパイクが形成されている様子が見て取れる。また、スパイクが成長していく過程では液滴周囲の溶液が青紫色に変化している。 Ref.1 金属ナトリウムや金属カリウムの塊を水中に投げ入れ、爆発を眺める。化学を使った悪ふざけの定番ともいえるこの爆発反応は、アルカリ金属の高い反応性を説明する実験として、何世代にもわたり化学を学ぶ学生たちを驚嘆させてきた。ところが今回、これまで単純明快とされてきたその反応機構の裏に、一連の興味深いプロセスが隠されていたことが明らかになった1。 アルカリ金属が水と接触して
毒とは: 一般に,外来性物質で生体に毒性を示すものを毒と呼ぶ。医薬も一種の毒である。飲む毒を毒物(poison),生物起源の毒を毒素(toxin)と総称し、特に毒腺で作られる毒を毒液(venom)と呼んでいる。 われわれの身の回りには,毒(生物毒、天然毒)をもつ生物がいる。毒をもつ生物は,ある種のバクテリア,菌類,原生動物,植物,爬虫類,両生類,魚,ウニとヒトデ,軟体動物,および昆虫など多岐にわたる。植物では、トリカブト、ケシ、南米のコカの葉、インド大麻などが毒(植物毒)をもつことが知られている。生物毒の働きとしては,赤血球を破壊する溶血毒,細胞や組織の壊死を引き起こす壊死毒,主に動物の神経系に作用する神経毒などがあるが,捕食のための武器として使われる毒は神経毒が中心となる. 細菌やカビの毒はきわめて毒性が高いため生物兵器として開発されているものもある。このように,生物毒の用途としては①医
大塚美穂 夢物語ではありません。元素の核変換が生じる原子炉の仕組みを活用して、戦略的に元素を生成するための研究が進んでいます。不要なものから必要なものを、豊富なものから希少なものを、安価なものから高価なものを。期待が膨らむこの技術の実現に向けて、高木さんと竹澤さんは、象徴的な元素である「金」の生成を実証することで第一歩を踏み出したいと言います。現代の「錬金術」を志す2人の研究者のチャレンジに、応援をよろしくお願いします! 2018年7月16日に開催される都市大セミナー「元素合成 ー宇宙と原子炉の錬金術ー」の案内はこちらからご覧いただけます。 原子炉内で生じる核反応 みなさんは原子炉という言葉を聞いてどのようなイメージをもつでしょうか。原子力発電を思い浮かべ、エネルギーを生産するもの、なにか危ないもの、といったイメージをもつ方が多いのではないかと思います。原子炉とは、核分裂連鎖反
【本研究のポイント】百年にわたる謎「なぜ有機化合物の炭素はシリコンで置き換えられないのか?」世界最高精度の量子化学計算により、化学結合における内殻電子のトポロジーを世界で初めて解析。炭素はシリコンと異なり内殻電子のトポロジーを変え、価電子が自在に共有結合を形成できる。炭素以外でも内殻トポロジー形成をする特異な元素を推定。 【研究概要】横浜国立大学の量子化学研究グループが、炭素化合物の不飽和結合において、シリコン化合物とは異なり、内殻電子が結合性に寄与することを世界で初めて発見しました。世界最高精度の第一原理計算の結果、炭素分子は内殻電子のトポロジーを変えられ、価電子が自在に共有結合を形成できるのに対し、シリコンを含むほとんどの元素では結合形成をしても内殻のトポロジーを変えないため柔軟な結合形成は阻害されることがわかりました。本研究から、生命における有機化合物の炭素は他の元素で置き換えられな
生物は豊富にあるケイ素を利用しない。このたび、ケイ素と化学結合を形成して体内の生化学経路に取り込むことのできる酵素が見いだされた。さらに、ほんの数カ所の変異を加えたところ、人工触媒をしのぐ効率でケイ素–炭素結合を形成した。 ケイ素と炭素の間に化学結合を形成できる酵素が、アイスランドの温泉(有名なブルーラグーンを含む)に生息する細菌から発見された。 Credit: Arctic-Images/The Image Bank/Getty ケイ素は、至る所に存在し、地殻中の存在度が酸素の次に高い元素である。それにもかかわらず、生体内の生化学過程になぜ取り込まれないのか分かっていない。 だが今回、生物は機会を与えられれば、ケイ素と炭素の間に化学結合を形成できることが見いだされた。カリフォルニア工科大学(米国パサデナ)の化学エンジニアFrances Arnoldらは、温泉に生息するある細菌から得た天然
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