私たちは、『存在と時間』序論の核となる論理をたどり終えた。これまでの歩みを要約しておこう。 『存在と時間』序論の論理: ①「そもそも存在するとは、何を意味するのか。」哲学は、この問いをあらためて設定するべきである(存在の意味への問い)。 ②ところで、現存在、すなわち人間は、存在の問いを問うにあたって、比類のない地位を占めている。人間は存在についての理解(存在了解)を持つとともに、自分自身、自らの存在に関わる存在者として実存している(現存在の存在的-存在論的優位)。 ③従って、存在の意味への問いを問うためにも、まずは人間という存在者のあり方を、すべての先入見を捨て去りつつ、徹底的に問い直さなければならない(基礎的存在論としての、現存在の実存論的分析論)。 これから本論に入るにあたって心にとどめておきたいことは、『存在と時間』を読むことは私たちにとって、私たち自身の生を根底から捉え直し、取り戻