末井昭さん(編集者・エッセイスト) 48年生まれ。「写真時代」などの創刊に携わる。最近はテナーサックス奏者としての活動もさかん。=山本和生撮影 ■自殺を防ぐ「病、市に出せ」 『生き心地の良い町』 [著]岡檀 (講談社・1512円) 読んだのは2013年、ぼくが『自殺』という本を書き上げ、出す直前でした。書く前に読んでおけばよかった、と思いました。 社会学者の岡さんが徳島県にある海部(かいふ)町(現海陽町)という全国屈指の自殺率の低い町に入って、なぜなのかを調べた本で、謎解きの魅力もあるんです。 自殺率の高い秋田県のことは、ぼくも詳しい方に話を聞いたことがあります。秋田は美容院が多く、NHKの受信料支払率も際立って高い。真面目で人目を気にするという県民性なんでしょう。 海部町は逆です。赤い羽根募金が集まらない。人は人、自分は自分なんですね。そのくせ、鬱(うつ)になった人のところに押しかけ「あ