家族の退職勘定から得られるわずかな利益にうんざりしていたリン・ネイスさんは2021年後半、グローバル不動産の人気スポット、米集合住宅への投資で30%のリターンを実現していた会社に20万ドル(約3100万円)を投資した。資金の大部分がその後失われた。 ビジネススクールを卒業し、ワシントン州ヤキマで歯科医を開業する夫の収入を投資に回したネイスさんにとって、損失は個人的な災難だ。けれども彼女のタイミングを誤った投資と、ソーシャルメディアの扇動やウォール街の証券化マシン、金利急上昇がぶつかった物語は、ネット依存に伴うFOMO(取り残される不安)とイージーマネーの相互作用が、米国の不動産バブルを崩壊させた状況をうかがわせる。 MSCIによると、3月時点でディストレス状態にある物件は、集合住宅の約100億ドル相当に対し、オフィス物件は380億ドル余りに上り、米国の商業用不動産(CRE)の不安の多くはオ