著者とは個人的なつきあいもあるし、よく本を贈ってもらうが、だからといってほめないのが当ブログの冷酷なところ。残念ながら、本書は「コモンズ」という基本コンセプトからして間違っている。 コモンズというと恰好いいが、日本語に訳すと入会地である。典型的には山林や漁場のように共同利用する資源で、経済学ではcommon pool resourcesとよぶ。これは排除不可能で競合的な資源のことで、「コモンズの悲劇」が起こることが知られている。しかしウェブは、この意味でのコモンズではない。情報は排除不可能だが非競合的だから、コモンズではなく公共財なのだ。この点は、セミナーでLessigにコメントし、彼も認めた。James LoveやWerbachなども、最近はpublic goodsという言葉を使っている。 コモンズというのは、著者が理想化するほど美しい世界ではない。むしろ前近代の日本では総有制という