このシュンペーターの代表作は、彼の経済観から理論的枠組みまで、のちの著書の主題まで含んだもので、お忙しい方は本書だけ読めばシュンペーターの経済学の概要を知ることができる。もっとも、本書を読み通すこともなかなか難しいかもしれないので、本稿で重要部分をダイジェストしておこう。本書はシュンペーターの著書では現在まで強い影響を維持している唯一の書物である。なかでも第二章がポイントとなる。 シュンペーターが考える経済発展とは、第一に内生的、自発的に生まれる経済の循環的変化であり、第二に非連続的な変化である。内生的な変化とは、「経済が自分自身のなかから生み出す経済生活の循環の変化のことであって、外部からの衝撃によって動かされた変化ではなく、自分自身に委ねられた経済に起こる変化にしぼられる」と、伊達邦春先生は述べている(★注1)。 そして、経済発展の駆動力は企業者によるイノベーション(新結合の遂行)
ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(1883-1950)。 世界中で知られる高名な経済学者であり、世界中の経営者やビジネスマンにも大きな影響を与えている経済思想家だが、シュンペーターの著書が現在、広く読まれているわけではない。岩波文庫に代表作は収録されているものの、たぶん読破した人は稀であろう。もともとドイツ語で書かれ、表現も難しくて経済学のアマチュアがすらすら読める書物ではないからだ。しかし、シュンペーターの主たるアイデアはだれでも知っているはずである。 シュンペーターは弱冠25歳で初めての著作である『理論経済学の本質と主要内容』(1908、注1)を上梓した。そしてさらにアイデアを膨らませ、1912年に刊行し、26年に改訂された『経済発展の理論』(注2)第2章「経済発展の根本現象」で、経済成長を起動するのは企業家(アントレプレナー)による新結合(ニューコンビネーション)だとしたのである。
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