思考を支えるデジタル・シミュレーション 「思考の道具としてのコンピューター」──これは、ハワード・ラインゴールドの名著「Tools for Thought」(邦題「思考のための道具」)を背景にした言葉である。 コンピューターは人間の思考を支援するツールとして無限の可能性を秘めている。しかしそれは、現在主流となっている文書作成や電子メール、ウェブブラウズとは異なった分野のアプリケーションにあると私は考える。 その最も有望な分野こそ、シミュレーションだ。現実世界の現象を分析してそれを説明する論理的モデルを構築し、シミュレーションにより実際にはまだ起きてない世界を予測する。このデジタル・シミュレーションは、複雑な因果連鎖から起きる環境破壊などの予測にその威力を発揮してきた。'50年代にMITのジェイ・W・フォレスター名誉教授が作り上げた「システムダイナミクス※1」は、そのための画期的なモデリング
